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『人狼伝説 変身と人食いの迷信について』

人狼伝説―変身と人食いの迷信について
Sabine Baring‐Gould
4409510622


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読了。

十九世紀にイギリスで刊行された、「人狼(狼人間)がヨーロッパでどのように信じられてきたかを客観的に伝えようとした」初期の頃の本。

人狼伝説研究史においては初期に書かれ、その後何度も引用されたとても重要な本だそうです。
この本に影響された小説も数限りないと推測されています。
初期の研究本であり、学術的には文章に飾りがありすぎ、構成があれもこれもと多岐にわたりさらにエキセントリックでもあるという欠点もありますが、情報の量と質にはすばらしいものがあります。

私にとっては、十九世紀における人狼伝説の受けとめられ方が肌で感じられるような本でした。

以下、目次です。


第一章 はじめに
第二章 古代人と狼憑き
第三章 北方の人狼
第四章 北欧における人狼の起源
第五章 中世の人狼
第六章 恐怖の審理室
第七章 ジャン・グルニエ
第八章 人狼と民間伝承
第九章 先天的な狼憑き
第十章 人狼神話の神話学的起源
第十一章 ド・レ元帥 I〈審理〉
第十二章 ド・レ元帥 II〈裁判〉
第十三章 ド・レ元帥 III〈判決と処刑〉
第十四章 ガリツィア地方の人狼
第十五章 特異な事例――ハイエナ人間
第十六章 説教の中の人狼

訳者あとがき
参考文献一覧



見ればわかるとは思いますが、この本の中には神話的な人狼解釈、そもそも人狼・狼憑きが具体的にはどのような人物・状況を表す言葉であったかという民俗学的なアプローチ、実際に起きた(かなり猟奇な)事件、という今から見るとバラバラな部分で成り立っています。

初めの二部はまとめてあっても違和感がありませんが、最後の現実事例はいまなら犯罪心理学や精神医学の分野に含められるものなのではないでしょうか。

しかし、著者はこの部分にもっとも大きな関心をよせている模様で、ここまで具体例を書かなくてもというようなグロテスクなところまでくわしく記してあります。そういう猟奇な出来事が苦手な方は、この部分は読まない方がよろしいかと思いました。

かくいう私も、ジル・ド・レ元帥、通称青髭公の事件の章には辟易させられました。ここの記述にはかの事件の経過は記してありますが、原因となった犯人の精神的な資質や犯罪に至る状況などはまったく書かれていません。

大昔の本に求めるものが違うとは解っていても、他の事件関連の記述も含めて、ただの俗な読み物になってしまっている気がしました。

初めの方に、人食いは人間ならばだれでも犯す可能性がある事柄と書かれているのですが、それに対するフォローがまったくないような……。

でもまあ、青髭公はともかく、ほかの犯人は理解できないでもない状況に置かれていたようなので、しぶしぶと納得することにいたします(苦笑。

その件は無視して、最初のほうの考察はなるほどとうなずける部分も多いので、読んで損をしたとは思っておりません。

最後に挙げられている妙な(笑)説教に、迷信深くあっても現実的でもある人間のたくましさを垣間見た気がしました。

余談。
「高貴な家柄のことなので」と名を伏せられている東欧の王族の話は、『ドラキュラ伝説』に記されている話ではないかなあと思いました。十九世紀にはまだタブーだったんだな……。

ドラキュラ伝説―吸血鬼のふるさとをたずねて
レイモンド・T・マクナリー ラドゥ・フロレスク 矢野 浩三郎
4047030260

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