『草祭』

草祭
恒川 光太郎
4103130415


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読了。

日本のどこかにある“美奥”という集落にかかわる、どこか懐かしく恐ろしくかわいた切なさを含んだ連作短編集。

近世くらいから変化していないような風景と昔風の言い伝えを持つ、不思議な場所“美奥”。
“美奥”に惹かれたり捕らわれたり、不思議で怖いものと出会ったりした人びとそれぞれの人生の大きなワンシーンの記憶のような物語集でした。

収録作品は以下の通り。


けものはら
屋根猩猩
くさのゆめがたり
天化の宿
朝の朧町



この作家さん、初めの頃は怖ろしさと悪意と意表を衝く展開が強烈に印象に残ったものですが、この作品集は懐かしさとうっすらとした哀切が読後に残りました。

全体的に描写に密度が増してきたのも嬉しいです。とくに自然描写が増えたような。「樹の皮の甘いにおい」みたいな言葉遣いにくらっときたり。好きなんですよねー、こういう、五感に訴える描写が。おかげで昔めいた異界の光景がより鮮やかになりました。

展開はやっぱりえっと思うようなものばかりなんですが、それが物語の中で突出してこなくて、物語世界に深く馴染んでお話ぜんたいとして味わえるような作品に仕上がってます。

いままでは、どこかここではないところを舞台にしていても、それがあるということが解るだけでしたが、この本では“美奥”の起源もわかったりして、それがまた日本昔話ばりの怪奇譚だったりして、いやー、たいへんに面白かったです。

語り手の思い出話みたいな雰囲気の話もおもしろいけど、この「くさのゆめがたり」は別格に好きだと思いました。

それから、不思議が二重に組み込まれていて、現実的な悪意の話が朧の中にうすれていくような最後の話は、どこか居心地の悪いような、それでいてこれでいいのだみたいな雰囲気で、かなり独特な読後感でした。

読みながら、二作目の長編の要素があちこちにあるような気がしました。ただの私の印象ですが。

いままで読んだ恒川作品で一番この本が好きです。
いきおい、他のも読みたい! という気分になったわけですが、この本が最新作でした。

次作を首を長くしてお待ちしています。

『蟲師』とかがお好きで人の黒い部分が露骨に出てきても大丈夫、な方はお気に召すのではないでしょうかw

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