『天山の巫女ソニン 5 大地の翼』

天山の巫女ソニン(5) 大地の翼
菅野 雪虫
4062155206


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読了。

朝鮮半島風異世界を舞台に、巫女として落ちこぼれた少女ソニンの見聞のひろがりと成長を国家間の駆け引きの中で描く、戦乱ファンタジー。完結編。

最初のうちはたんなる少女の成長ものかと思っていたのですが、最終的には人びとの部分や国を突き動かすものの正体までを少女の視点から描いていく、視野の広い物語となりました。

前巻までに顔を揃えた三国の王子・王女たちは、巨山王の思惑に人びとの心が戦争へと傾いていく情勢でなんとか踏みとどまろうと努力し、最小限の被害で食い止めようと力を尽くします。

急激な流れの中で自分を見失わず、流されまいとし、かつ抗おうとすることの大変さと、その行為の尊さが印象に残ります。

このあたり、かつての、そして現在のこの国の雰囲気に似ている部分があり、背筋が寒くなりました。

ソニンの義兄イルギの語る「七割の法則」も堪えた。

七割の人はその場の雰囲気に流される。自分の考えをしっかりともっていないからという話です。

自分がしなくてもだれかがなんとかしてくれる、みんながするから自分も同じことをする、という理由で目先の利益にふりまわされていると、とんでもない状況をひきよせてしまうのかもしれない……ということをあらためて考えさせられました。

物語の大きさに比して本自体はこれまでと同じくらいのページ数。すこし描き足りないかなと思われるところもありましたが、この枚数にこれだけの展開を収めたということには、子供向けという点で意味があると思います。ディテールに細かさを求めるとそこに意識がむかってしまい、大きな流れを見失ってしまう畏れがあると思うので。

とても優しく穏やかな文章で、わかりやすく、なおかつ実感のできるリアリティーをもち、シビアであるけれども理想も忘れない、希望あるエンディングでほっとしました。

ソニンの物語としても、巫女として落ちこぼれたという発端が最後まで効果的に生きていて、うつくしいまとまり方をしたと思います。

全体的には子供むけですが、大人が読んでもいろいろと楽しめるシリーズでした。

欲を言うならば、どこかにラブがあればなーと(笑。
ちょっとした淡いほのめかしはありましたし、深読みも懸命に努力すればできないこともない気はしますが、全体的にほんわりのどかに清かったなあという読後感です。

私の印象にもっとも強く残った巨山のイェラ姫など、どんな伴侶を持つのかものすごく疑問と期待が募るのですが、いまのところ飼い犬ムサ以外の相棒が見当たらない(苦笑。

いや、彼女はそれでいいのです、ということにして余韻を楽しみたいと思います。

天山の巫女ソニン 1 金の燕
4062134233

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