『翼の帰る処2 鏡の中の空 上』

翼の帰る処〈2〉鏡の中の空〈上〉 (幻狼ファンタジアノベルス)
妹尾 ゆふ子
4344817079



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読了。

隠居したい。切実に願う心中とは裏腹にどんどん出世してどんどん忙しくなってしまう、病弱な三十七歳、官吏ヤエトのぼやきの記。あるいは皇帝の跡継ぎをめぐる陰険な権力闘争と戦う皇女陣営の奮闘記。日常と幻想とが交錯するドラマチックな異世界ファンタジー、シリーズ第二作の上巻。

前作がとても面白かったので期待大すぎでちょっと不安だったのですが、杞憂でした。

冒頭からどんどん行きます、展開速い!

キャラクターが前作にも増してつよい存在感を放ち、それぞれに勝手なことを言い出します。漫才のようなシーンが続きますが、かれらの行動には意味があります。状況を反映した漫才なのです。

そしてわれらが主人公・皇女の副官ヤエト先生の心中突っ込みが大炸裂!(笑。

ヤエトは観察者としては冷静なあまりかなり辛辣なようです。多分に、かれらの行動がほぼすべて自分に面倒として降りかかってくるからだと思われますが。この突っ込みがあんまり可笑しいので、ヤエト先生語録を列挙したくなりました。

そうして漫才をしているようで話は次第に深刻な方向にむかっています。ヤエトの疲労とぼやき突っ込みに攪乱されているうちに、ずぶずぶと深みにはまっていくようでした。ううむ、なんという深謀遠慮。

ディテールにのめり込むたちである私は、もったいないからという理由で小刻みに読んでいたこともあり、物語の表面の漫才(だけじゃないけど!)ばかりに気をとられてしまいました。だってあんまり面白いんだもん。

世界設定の緻密さと深さ、広さがいろんなところで浮かびあがるところが好きなんです。旧帝国からわかれて立った帝国の歴史とか、砂漠の諸国の話とか、古王国の神の話とか表音ではない表語文字のこととか。征服王朝の内実を動かしているのは誰かとか、おりおりにヤエトにあらわされる予言とか、ジェイサルドの過去とか、なぜか強くなりつつある神の恩寵のこととか。

そう、恩寵のことはとても気になります。今回は舞台がどんどん移動していき、皇女が権力闘争に巻き込まれていく様などが描かれていくため、幻想シーンは抑えめなのですが、鳥たちが羽ばたいて舞いあがる様が描かれるたびにくり返される、「魔法なのだ」というフレーズが、とても心に残るのです。

なぜ、恩寵のちからが強まるのか、それはもしや人間と神との距離が縮まるようなとんでもない出来事の前触れなのではあるまいか。

そんなことを考えつつ読んでいたら、感想を書こうというときになってストーリーの輪郭を思い出せない自分に呆然としました。バカモノ(涙。

ええと、読み返してみましたら、これはヤエトが新たな困難に立ち向かう話でした。ヤエトは皇女の側で助け手でいるためにいろんな苦労を重ねなければならないようです。皇女が認められる度にヤエトも周囲に認められねばならなくなり、面倒な仕事が増えていき隠居から遠離る、というふうにシステムができあがっている模様です。

皇女のひきたては周囲に複雑な波紋を描き、ついに真上皇帝の御前にて嫌がらせのようにとてつもない試練に放り込まれる始末。

……哀れな。とか言いつつ面白がっているのは私ですが。

その後は皇帝の跡継ぎとして横一線に並ばされた皇子たちの権力レースのえげつなさとともに、帝国内の権力図があきらかになるという、じつに生々しい展開です。ルーギンがいつになく協力的なのが救いでしょうか。かれもいろんな過去でいろんな決断をしてきたのですね。というエピソードがとても印象的でした。帝国って、ホントにまだできて間もない国だったんだなあ……。

これからの皇女陣営の舵取り役を任されたヤエトの運命やいかに。

というわけで、ヤエトは大なり小なり苦労しっぱなし、倒れたり倒れかけたり倒れそうになったりしっぱなしですが、私は鳥が命の北領の民と巨鳥たちに癒されました。

ヤエトの騎鳥シロバってヤエトを雛だと認識してたんですね。頼りないから(苦笑。
鳥と乗り手との共感いや交感か、を他人事としてしか認識できないヤエト視点からでも、その絆の強さは想像できます。

このあたり、やはりマキャフリイの「パーンの竜騎士」を彷彿とさせますねー。
繁殖期に入った鳥に人が引きずられるという話がじつにそうでした。

北領の厩舎の状況が怖いです(汗。そして皇女の状況も……!

強面爺執事のような騎士団長ジェイサルド様の万能っぷりに酔いしれつつ、下巻をお待ちしていますv

読むならぜひ、第一作からw
翼の帰る処 上 (幻狼ファンタジアノベルス S 1-1)
妹尾 ゆふ子 ことき
4344814665


作者様のブログ【積読山脈造山中】にて、感想を募集されているのでトラバを送ってみます。トラバを送るのもしばらくぶりなので緊張する。成功しますように。

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