『星に降る雪/修道院』

星に降る雪/修道院
池澤 夏樹
4048738380


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読了。

喪失による傷、生と死の狭間、罪への贖いを、非日常と日常のあいだで静謐につづる。中編二編を収録。

評論、紀行文や翻訳などでも活躍中の作家、池澤夏樹の小説を久しぶりに読みました。きっかけは何だったのだか忘れましたが、タイトルに惹かれたのかな。うん。

読んでいて、この方の文章はこんなに乾いていたかなーと思いましたが、冷静で感情に流されずに、そのうえで熱いなにかを描いていると感じました。

ここに収録されている作品はどちらも死をテーマにしています。が、印象は正反対。

下界とは隔絶された山頂で展開し、ひんやりとして静かで、理解の難しいけれどどこか解放された感のある「星に降る雪」。

クレタを舞台に、若さゆえの熱とそれによる激情を距離をおいて描き、ギリシア悲劇のような濃密さを時の経過によって過去の逸話とする「修道院」。

話の舞台も対照的でした。冷たい風によってさらされていく白と、強い陽射しと濃い影の落ちる南国と。

「星に降る雪」は過去の(そうとう過去。しばらく読んでなかったから初期作品くらい?)池澤作品に空気感が似ている気がしました。けれど読んでいる私が歳を食ったのでうけとめる内容がかなり変化していて、不思議な気がした。

いまの私が読むとこの話は一度彼岸を見て帰ってきた人が此岸に戻れない話だとおもわれるのですが、主人公が捕らわれているなにかが闇ではないあたりが非常に興味深いんですね。
この話の彼岸は、宇宙なのだろうか。
日常世界を忌避する態度と無限の宇宙に対して開かれた状態を保とうとする姿勢が奇妙にアンバランスで。

あ、そうか、かれは世界には開いているけれど人間に対して閉じているのか……。

とても不思議な感覚の残る話でした。

それに比べると「修道院」のほうがわかりやすかったです。
ギリシャ悲劇の近過去版みたいな雰囲気でした。

どちらも短いけれどこってりとした内容で、いろいろと考えさせてくれた。面白かったというか、興味深かった。読みながらいろんな事を考えました。でもって答えがなかなか出ないのですな。

端的に言えば、ツカレタ(苦笑。

でも、いつも単純な話を読んでいると頭を使わなくなるので、たまにはこういう読書もいいかなと思いました。

文章的好みでいうと、池澤文はエッセイで読むほうが馴染みやすいなと、私は感じました。もすこし色気とか飾りがあるほうが読むのが楽な気がするの(苦笑。

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