『翼の帰る処2 鏡の中の空 下』

翼の帰る処〈2〉鏡の中の空〈下〉 (幻狼ファンタジアノベルス)
妹尾 ゆふ子
4344817400



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読了。

深みと広がりを持つ異世界を舞台に、隠居願望のつよい病弱役人ヤエトとそのあるじである皇女を中心に帝国の陰謀を描く異世界ファンタジー。シリーズ二の下巻。

ああ、とてもよかった……!

巨鳥に乗って空を飛ぶ魔法的な爽快感と、地べたで営まれる人間たちの張りめぐらせる陰謀と。
強い光と落とす深い影のコントラストが印象的な物語です。

上巻では皇女がどうにかなっちゃった! というところで終わったので、心配20%好奇心80%でつづきを待っていたのですが……なんともはや。ヤエト先生、乙女心にはまったくアンテナが立ってない模様です。そこが読んでいて楽しいのですがね(苦笑。

本筋は盗賊団を追って砂漠へ。とある人物との出会い。そしていっきに第二皇子の収める隣国博沙国へ焦点が移動。皇帝の子どもたち同志の会合《天地輪》(これをなんど天地人と読んでしまったことか;)の集いで顕在化する跡目争い。と腹の探り合いの続く展開。

ヤエト先生が息も絶え絶えで「隠居したい」と悲鳴をあげ続けているのもむべなるかな。息の抜けない緊張感つづきの下巻でした。

ヤエト先生が有能なのに欲がないのは、たぶん自分の身体に見切りをつけているからだろうなーと思います。あることについて自分にはできないと思ったらもうそれ以上のことは考えない、という方針で三十何年生きてきたんじゃないかと。人生の幅を非常に狭めていると思いますが、やりたいのにできないと思うと辛いわけで、辛い思いをするくらいなら初めからあきらめていた方が楽なのです。というわけで人にたいしては律気でも自分になげやりというか、自分に対して無責任というか、そういう人間ができあがってしまったと。

有能なのに出世できなかったのは、そのあたりのことを周囲が感じていたからではなかろうか。

それでも今日まで生きのびてきたからにはどこかからの援助がほそぼそとでもあったんじゃないかな。たとえば、スーリヤみたいなさ、ヤエトが笑顔で無自覚にスルーしていった人がものすごくとはいかないまでもそれなりにたくさんいたんではないかと、勝手に推測いたしました、ワタクシ。

というか、今の無自覚にひとをたらし込んでいるヤエト先生をみると、そう思わざるを得ないのですな。

その証拠に、なんだかんだいって、ヤエトの周囲にはかれを好ましいと思っている人間がたくさん残っているではありませんか。ヤエトが受けとめれば、笑顔を返してくれる人びとがこんなにも。

『翼の帰る処』で大切な物を得たヤエトは、『2』でそのことを自覚したのかなーと感じました。

ファンタジー的には、物語世界の神話や伝説にかかわるいろんなことがでてきて、とても楽しかったです。これって『風の名前』とか『魔法の庭』と絡んでいるんじゃないでしょうか……うろおぼえなので確信ないですが、いまとても読み返したくなっています。

それから、サブタイトルの由来が何度も形を変えて提示されてくるのがとても印象的でした。

下巻の表紙絵そのままにきらびやかな主従が大活躍してくれたのも嬉しい限りです。
ジェイサルドがすっかりなりをひそめている間に、ルーギンが良くも悪くも出ずっぱりで、その美形っぷりを振りまいていたのが面白かった。美形なのが面白いというのはなにか問題がありそうなんですが、どんなことをしても美形だっていわれるとなんとなく笑いがもれてしまうのです。私にとってはそれはギャグなのかもしれない(苦笑。

皇女がどんどん大人になっていくのは読んでいて嬉しかったし、どきどきしました。
ヤエト先生の、面倒なところがほほえましい、という気持ちはよくわかります。
こんなに観察力があるのにどうして乙女心だけスルーするのかなあ……。

出番は少しでしたが、皇妹と預言者殿の存在感がキョーレツでした。
とくに皇妹殿下、あなたはホントに怖いです。

このシリーズ、女性は強いから怖くなれる、男性は一見強いけれど可愛いヤツだ、というコンセプトなのかなあとふと感じる瞬間でした。

とにかく、面白かった。
時間を忘れて読みました。途中まで半端に読んでしまったのでまた冒頭から読んで、物語の流れを摑みなおすのにもう一度、さらに細部を確認するのにもう一度、と何回読んでも飽きませんでした。私には大変に珍しいことです。

乱戦の中でいまにも倒れそうなかれが意外に粘っていたのは、視点人物がすぐに昏倒したら戦闘シーンが消えちゃうからでしょうか。だとしたら視点人物であるという点もかれには面倒くさい役割なのかもと思ったりした(苦笑)

物語世界の、ストーリーに関連する部分の視界がどんどん広くなっているシリーズ、まだまだつづきがあるだろうし、つづいて欲しいと切に思います。

なんといってもシロバの雛が見たいです!

翼の帰る処〈2〉鏡の中の空〈上〉 (幻狼ファンタジアノベルス)
4344817079


作者様のブログ【積読山脈造山中】で感想を募集されています。トラバを送らせていただきます。

Comment

雛!

こんにちは。シロバの雛!同意です。(^^)
ここまであおっておいて、みせてくれないなんてことがあったら……かんべんです。

ご賛同いただき、ありがとうございます。
雛、見たいですよね~。
けっきょく下巻ではシロバが出てこなかったのでとても残念でした。
阿鼻叫喚の厩舎もリアルタイムで読んでみたかったですしw

シロバの雛ってヤエトの弟妹になるんでしょうかね?
鳥に兄弟概念があるかどうかはわかりませんが(汗。

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