『オイレンシュピーゲル 肆 Wag The Dog』

オイレンシュピーゲル肆 Wag The Dog (角川スニーカー文庫)
冲方 丁 白亜 右月
4044729085



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借りて読了。

近未来のウィーン=国際都市ミリオポリスで機械化された少女たちが地獄の最前線で駆けめぐる、ハードでありながら繊細かつ哀切な、国際謀略アクションSF。シリーズ第四巻。

クールでタイトでクリアでブチ切れの文章で歯切れよく描かれるアクション。
スピーディーかつ目まぐるしく変化する、自在の展開。
説明たらしくなく行為で描かれる複雑な心理。
苛酷な状況で身もこころも切り刻まれて苦痛に血と涙を流しながらも前進する、無謀ともいうべき勇気と忍耐。

とにかく、面白かった。

物語のスケールはどんどんアップして、三人の投げ込まれる状況もどんどん悲惨になっていきますが、優れた判断能力を持つ頭を持った組織がひとつの目的に向かって結束し対処していく様や、ともにたたかうひとびとの信頼関係などなど、読みどころもまたどんどん熱いものになっていっている。

話の密度が半端じゃない。
これだけめまぐるしい展開にこれだけの心理的な側面を描いてスピード感を損なわず、なおかつアクションものとしてのレベルも高く、しかもヒーロー物として必要不可欠な敵方のユニークさでも度肝を抜くという、とんでもないお話。
とくに敵との戦闘は『マルドゥック・ヴェロシティ』並のグロテスクさです。これをこなしているのが女の子なのか、はー。

しかも、この話、並行展開している姉妹編「スプライトシュピーゲル」としっかりリンクしていて、なのに独立してもきちんと読めるんですよ。

すごーい(溜息。

少女たちの不屈のど根性もスバラシイですが、彼女たちを補佐しリードする大人たちも格好良くて、吹雪くんはあいかわらず可愛いし、バロウ神父はほぼ定位置を獲得し、焱の妖精たちの登場も印象深く、もうこれ以上なにを求めるつもりか、というくくらい凄かったです。

そして今回はいままでいまひとつ人となりがつかみきれなかった夕霧ちゃんが大活躍。
ただ能天気に歌をうたっていたわけじゃないということがあきらかになったり、あの人に近づくためにと恐怖を抑えて戦い続ける姿がとっても健気で仰天ものだったり、いろいろと度肝を抜いてくれました。

レベル3の特甲のもたらす致命的な精神的副作用への必死の抵抗も、この巻の読みどころですね。

鍵はおそらく自分を保つための拠り所を得ているか否か。それはひるがえっていうと自分が周りに対してひらかれているか否か、にも通ずる物なのではないかと思うのですが、それって大人になるための通過儀礼のようなものなのかも。

苛酷な環境で育ってきた特甲児童にとっては厳しすぎる通過儀礼ではないかと思うのですが、これはフィクションだからより象徴的によりわかりやすい形で描いて読み手の心にすこしでも響くように、と意図してのことだろうと思います。

話が逸れましたが、とにかく面白かったです。
涼月が偶然手にした端末による、スプライトシリーズの小隊長とのやりとりにどきどきしました。

ケルベルスが地上で血みどろになって奮闘しているあいだに、別のところでおなじように戦っているフォイエルスプライトたちがいるんだーと思って。

ラストでふふっと笑えるのもよかったw

シリーズはここでいったん小休止状態のようですが、つづきを熱烈にお待ちしています!

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