『亡国のイージス 上』

亡国のイージス 上 講談社文庫
福井 晴敏
4062734931



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借りて読了。

現代日本(執筆時)を舞台に、国家間の謀略に巻き込まれて家族を失い復讐を誓った男たちと、かれらのひきおこす厄災から国民を護ろうとする男たちの陰謀と暗闘を、海上自衛隊の護衛艦を主な舞台として描く、スケールの大きな海洋冒険小説の上巻。

〈辺野古ディストラクション〉と呼ばれる在日米軍基地で起きた惨事によって明るみに出た生物化学兵器。その存在をめぐって国家間のかけひきが活発化し、自衛隊ではイージス艦の現場投入が開始された。その端緒として簡易的なイージスシステムを搭載した護衛艦《いそかぜ》が演習のための航海に出発する。艦長は不審な自動車事故により息子を失ったばかりの宮津二佐。かれを補佐する人員はすべて宮津の息のかかったものたちばかりだ。いっぽう、先任伍長として下士官を統率する仙石は、任務直前に妻から別れを告げられた。弱気になった仙石の目の前に、如月という若い部下が特異な存在感を持って認識され始めた。



〈辺野古ディストラクション〉というのは以前読んだ『Twelve Y.O.』で起きた事件です。
というわけで、先にそちらを読まされたわけですが、なるほど、読まないと「?」な感じで話が進むかも知れない。貸出元に配慮ありがとうございますと言っておきます。

物語の展開は前作とはちがい、丹念に登場人物の背景を描くところから始まります。

読んでいるとなるほどと思えるときがやってくるのですが、前振りが長いと感じる人もいるでしょう。じつは私もそのひとりでした。

主な舞台が護衛艦の艦内にしぼられてくると、ようやく始まるのかと期待が高まりますが、それからもしばらくは艦内に不穏な空気が蔓延していくようすが描かれていくので大量の謎と疑心暗鬼が満載です。

それに、作品全体の雰囲気が感情的に湿った感じで、ハイテク搭載の護衛艦の描写もどこか泥臭い。

日本の冒険小説ってこんな感じだったっけ……。
冒険小説を読まなくなって久しい私は、その湿り気に足がずぶずぶと沈んでいきそうな重苦しさにちょっと閉塞感を覚えました。

真正面からの人情話というのも、読まなくなって久しいからなー。

前作の薄っぺらさはきれいになくなって、これはこれでドラマとしてはよいと思うのですが……ほんとにドラマを見ているみたいな気がした。

というわけで、私はこの作品の登場人物の感情的な背景の描き方がちょっと苦手です。

たぶん、もっと醒めて乾いた感じの文章が好きだからなんだろうなー。
もしくはもっとエッジの効いた感じのシャープな文章。
あるいは華麗で切れ味の鋭い文章。

この作者さんの文章はオーソドックスをベースにして、全体的に湿った熱を帯びている、ような感じを受けました。

ストーリーはようやく本格的に動きだしたところでおわり。
下巻に続く、です。

すでに手元にあるのですみやかに読みたいと思います。

亡国のイージス 下 講談社文庫
406273494X

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