『亡国のイージス 下』

亡国のイージス 下 講談社文庫
福井 晴敏
406273494X



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借りて読了。


国際謀略によって生み出された海上自衛隊護衛艦の反乱を描く、情念に満ちた海洋冒険小説。下巻。

男たちの熱い情念。
この本を読んでいてもっとも印象に残ったのがそれでした。

父親としての無念を怨念にして利用される男。夫としての慚愧を抱えながら自分の生きてきた世界を護ろうとする男。子としての不安と恐怖から逃げつづけて特殊な世界に身を投じることになった男。

そして自分を裏切った祖国=父親を見返すために無謀な戦いを始めた男。

感情渦巻く中で展開されるのはぜんぜんスマートじゃない、むしろ無様で泥臭い戦いです。が、現実に人間のすることはどんなことでもそんな無様さを抱えたものなんだろうと思います。

途中どれだけリアルな護衛艦内描写があっても、登場人物の怨念にかき消されてしまってまったく印象に残らない。

思想だ使命だなどと言挙げしながらも、けっきょくは人間はひととの関わりでしか生きていけないものなんだとしみじみ感じた。

とてもよくできた大衆娯楽小説でした。
……が、ワタシ的には物足りない点もかなりありました。

女性視点がほとんどない。
ヒロイン的な役割のひとが酷すぎる。
ラストに出てくるあのひとは理想化されすぎ。

つまりなんですか、これは大人になって勝利に懐疑的になった男の子たちのための、勇気と友情のお話なのかなーと感じた次第です。

あとは好みの問題で、こんなに熱く語ってくれなくてもとか、もすこし余白があってもとか、感情付きの視点人物がたくさんいるのも善し悪しとか、演出が過剰すぎるのではとか、そんな感じ。

いろいろと不満はありましたが、最後の最後、海を眺めてのシーンを読んだらほとんどが許せるかなと思いました。

冒頭ときれいに対になって、なおかつ希望に満ちたエンディングは、情念のものがたりにふさわしい情景となって心に残りました。

それと超個人的には『Twelve Y.O.』の主要登場人物だった平さんの登場。
つねに過剰な演出がめだつストーリー中、平さんがらみだけがさらりとしていて、「お、やっぱりそうだったw」とニヤリとした。

手放しで好きとは言えないけれど十分に楽しませてもらったと思います。

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