『角獣の書 暁と黄昏の狭間III』

暁と黄昏の狭間〈3〉角獣の書 (トクマ・ノベルズEdge)
西魚 リツコ
4198507848



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読了。

生命の力を源とする魔術がおこなわれる世界を舞台に、社会に翻弄されつつ地道に自分の道を見いだそうとする少女の運命を描く、異世界戦乱ファンタジー。シリーズ第三巻。


小国ドムオイの貧しい鍛冶職人の少女セフル・アルゴーは、とある出来事によって生命の力ワンを見ることができるようになり、魔術大国オラの学院で学んでいた。しかし鍛冶職人になりたいという希望が断ち切れず、恩人であるドムオイ近衛騎士のギルダン・レイの消息を求めて神獣の国アミランテへをめざし旅立った。



数奇な運命に翻弄される少女セフルの人生これ災難といった趣のストーリー展開。
セフルはみずから求めて困難に飛び込んでいるつもりはないんですが、多少世間知らずな部分があり、見通しが甘いのは確かです。

しかし、これでもかと出会う落とし穴は、必ずしも彼女のひきよせたものとばかりも言えない気が……。

戦乱の最中の世情不安な社会では治安も悪化しているから、無防備なセフルみたいな子は餌食になりやすいんだろうな、きっと。

というわけで世知辛い世の中で簡単に罠にはまってしまうセフルは、またしてもにっちもさっちもいかない状況に陥ってます。

しかも今回のお仲間は人間じゃなくて、お猿です。

おかげで神獣の神官を王と崇めるアミランテの中枢に入り込むことにもなるんですが……。

アミランテは帯河のほとりの要衝にあり、帯河の利権を手に入れたい大国オラとリヴォ、一触即発の狭間でゆれ動いているところです。

ところがアミランテの王様はものすごく信心深い御方ですべてを神頼みにして祈りつづけるのみ。
家臣たちは表向きオラに臣従を誓いつつも、じつはリヴォとの裏取引を画策する人物がいたりと不穏な空気。

国と国との駆け引き、国内での権力争い、王と王妃の微妙な関係、様々な要素をまきこみつつ、いっきに開幕するリヴォとオラの決戦のようすがスゴイ迫力です。

生命魔術を駆使するオラの飛空船団とリヴォの海軍の激突、もすごいんですが、そのあとにもっとすごい展開が。

これをいうと完全にネタバレになるので書けませんが、いやーびっくりした。

このシリーズで私の好きなところは、リアルな異世界描写に生命魔術というしくみががっちりと絡み合い、異世界を異世界たらしめる要素として有機的に機能しているところです。

さらにそれが光と闇の二元論ではなく、もっと多様で多岐な面を有する生命の、ひいては世界の力をもとにしているところ。

その世界を崇めるという素朴な信仰から、しだいに力をひとのために利用するようになり、しまいには世界そのものをおのが力として利用しようとする勢力を生み出すに至っているというふうな背景も描いているところ。

様々な要素を含んだ密度の濃いお話でありながら、一冊ずつ確かに完結しているところ。

と、いろいろありますが、一番のツボは、登場人物が生身の肉体を持っていて、異世界でその人生を悩み苦しんで生きているところ、なんだろうなーと思います。

セフルはこれから念願の鍛冶職人になれるのか、ギルダン・レイが今後めざすものは、と興味が尽きません。

うん、やっぱり面白いです、このシリーズ。

この巻だけ図書館になかったため、読みたくてつい買ってしまうくらい、私は好きです。

さあ、これでつづきが予約できますw


暁と黄昏の狭間〈4〉甲蛇の書 (トクマ・ノベルズEdge)
4198508046

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