『あかんべえ 上』

あかんべえ〈上〉 (新潮文庫)
宮部 みゆき
4101369291



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借りて読了。

江戸時代、両親が深川で料理屋ふね屋を始めた十二の少女おりんは、新しい住まいで死にかけるほどの病に罹った。そのとき見た不思議な夢の中で、おりんは賽の河原でみた水たまりの水を舐めた。無事に病の癒えたおりんだったが、それから普通の人の見えないもの、お化けを見るようになった。おりんの住む屋敷には亡者の因縁がふかくからみついており、それはふね屋の商売に大きく影を落とすことになるのだった。



ひさしぶりの宮部みゆきは、やっぱり時代物です。

やっぱりというのは、最近の私はヘタレなので社会派ミステリがほとんど読めなくなっているからです。

今回のお話は料理屋が舞台。なので食べ物の話がたくさん出てきて、けっこう楽しいです。
それがどんな品物なのか、あんまり想像がつかない食生活の貧しい私ですが、それでも食べ物の話は元気になります。

それから、この話のチャームポイントはおりんちゃんの知り合う、ふね屋に憑いてるお化けさんたち。

生前はさぞかしな遊び人だったろうと思われるお侍の玄之助さん。
艶やかなたぶん芸者のおみつ姐さん。
深い苦しみと怒りにかられて暴走する哀れなおどろ髪。
指圧の達人・笑い坊。
そしておりんちゃんに会うたび、あかんべえをする少女お梅。

引っ越してきたばかりで友達がいないおりんちゃんにとって、玄之助やおみつは親しい友人、相談役。
そこまではいかずともほかのお化けさんたちもとても気になる存在。

それでもお化けさんたちは開店したばかりの料理屋にトラブルばかりをもたらします。

かれらの存在がふね屋の商売に支障を来すのを黙ってみているわけにも行かず、おりんちゃんはひとりで奮闘する……。

というお話。

じつに安定した筆力で、過不足なく、するりと話にひきこまれてしまいました。
これぞ大衆小説という感じ。

料理屋関係のいろいろや、登場人物にまつわる因縁話、ふね屋の建てられた場所に関する酸鼻な過去話。複雑な要素と登場人物をさらりと描いて、読ませます。

あんまりするする読めるので、私としてはもう少しなにかをと思ったりしますが、これはこういうさらりとしたところが持ち味のお話なんでしょう。

お化けが出てきますがまったくこわくなく、むしろ、人間たちのほうの因縁のほうが面倒くさくて恐ろしい、というお話でもあります。

さて、これからおりんちゃんとふね屋はどうなるのでしょうか。

読んでいて一番切ないなあと思ったのは、大事件が起きた翌日、だれも起きてこない台所でおりんちゃんがお腹を空かせているところ。

冷蔵庫も電子レンジもないところで独りで生きていくためには、生活力が今より数倍必要だったんだろうなーとしみじみいたしました。

これから下巻へと参ります。

あかんべえ〈下〉 (新潮文庫)
4101369305

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