『あかんべえ 下』

あかんべえ〈下〉 (新潮文庫)
宮部 みゆき
4101369305



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借りて読了。

江戸時代、新規開店したばかりでお化け騒動に見舞われた料理屋の一人娘が、お化けさんたちと事件を捜査する、時代ミステリ。下巻。

上巻にひきつづいてさっくり読みました。
お化けが出てくるけど怖くはなくて、むしろ厄介なのは生きている人間である、というスタンスは変わらず。

雰囲気はヒロインのおりんちゃんが十二であるところからもきているのか、ほのぼのと日常的で、メインはお化けたちが何故ここにいるのか、お化けが見えるひとと見えない人がいるのは何故なのか、そしてどうしておりんちゃんはすべてのお化けが見えるのか、という謎をとくミステリ的な側面のほうが大きくなっていきます。

最後の謎は読み手にはすでにわかってると思うんですが……。まあ、おりんちゃんには謎なんでしょうね。

あいかわらず、ふね屋のお化けさんたちがいい味出してます。
玄之介さんとおみつさんが出てくるだけでわくわくする。
だけど、作者さんはストーリーを優先して必要以上にかれらを登場させてくれません。
これが話運びの達人の術なんだとは思うのですが、なんか焦らされてる気分になりました(苦笑。

あとは、なかなか登場しない差配の孫兵衛さんがとても気になるし、孫兵衛店で暮らすヒネ勝こと勝次郎くんとおりんちゃんのやりとりはほほえましいし、お隣の貧乏旗本長坂様のざっくばらんなおひとなりとかも楽しかったです。

そして、事件の性質上、話が解決するときにはなにが待っているかは知ってはいても、最後のシーンにはことの終わった安堵感とともにせつない寂しさがありました。

でも、後味がよかったのはこのラストのおかげだと思われます。

そういえば、日本の時代小説でお化けが出てくるものはたいていは伝奇ものと呼ばれるわけですが、この話は伝奇ものにつきものの湿度とおどろおどろしさがまったくなくて、そういえばこういうラストを迎える伝奇ものっていうのもあんまり無いような気がします。

むしろ、このテイストは私の馴染んだファンタジーのものだなー。

とか考えて解説を読んだら、菊池秀行氏がまさにそのとおりのことを書いておられました。むむ。

とてもシビアな出来事を題材にしているのですが、それを平静にあたたかな視点で描いている、もしかしたら児童書としても通用するんではないかと思えるような品の良さをもった、時代ファンタジーでした。

私としてはもうすこし情景描写がほしかったなあと思うのですが、ストーリーテリングの手練れの手腕を堪能させていただいた、という気持ちです。

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