『ザナドゥーへの道』

ザナドゥーへの道
中野 美代子
4791764838



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読了。

近代以前に東洋と関わりを持った西洋人について書かれたエッセイ風歴史小説の短篇集。

これはたいそう面白く、また興味深い本でした。
ものすごい情報量で取りあげた人物をとりまく時代と世界を描きつつ、詩的な雰囲気もあるという、希有な作品だったと思います。

西洋人が見て受けとめた東洋は、やはり西洋人の文化によって解釈されたものなので、ちょっととんでもな世界だったりするのですが、そのへんが異文化接触の際に起きるさまざまなパターンとしていろいろ面白い。

また西洋人が東洋にどんなものを求めていたかという背景には、西洋人の置かれている政治的な状況などが鏡のように反映していたんだなーということもわかります。

東洋に住まうキリスト教徒の王プレスター・ジョンの伝説は、何故こんな荒唐無稽な話ができあがったのかずっと不思議だったんだけど、今回その謎がすこし解けたような気がしました。

以下に目次を記しておきます。


1 亡国の大使 ミカエル・ボイム
2 碑文のなかの旅人 景教僧アロペン
3 敦煌蔵経洞 ポール・ペリオ
4 南海の兄弟島(レ・フレール) ギュスターヴ・ヴィオー
5 探索島(ルシェルシュ)の樹 ピーター・ディロン船長
6 異教徒たちの帝国 ギョーム・ド・ルブルク
7 月の上からペキンを見れば ミラ・チョ・チョ・ラスモ
8 肘掛け椅子(アームチェア)の風景画家 トマス・アローム
9 ザイトン双子塔 ポルデノーネのオドリコ
10 二都物語 プレスター・ジョン
11 エトナ溶岩流 石工のジューリオ
12 シカゴ自然史博物館 ベルトルト・ラウファー

関係略図





毎回感じることだけど著者の博学ぶりには賛嘆の念を禁じ得ません。
なんでこんなにいろいろ識ってるんだろう。というか、いったいどれだけの本を読んだらこれだけの知識が得られるんだろう。

その本には中国語英語はもちろん、ラテン語ギリシャ語あたりまで含まれていそうな気配がひしひししてしまう。

もちろん、異文化を学ぼうと思えば言葉から始めなければならないのは当然でして、であるから作中に出てくるベルトルト・ラウファーなんて語学の天才などが活躍するのでしょうけど。それができないのにこうして専門家がかみ砕いてくれた作品からエッセンスを味わうことができるのは大変ありがたいことだと思います。

そんな多彩な知識をもって描き出される歴史上の人物――軍人や宗教者、知識人から商人、市井の職人まで――の、とある時代のとある情景がくっきりとうかびあがる一瞬がたいそう印象的でした。

そして、西洋人が見た東洋を現代の日本的な立場からまた語ってしまうという、幾重にもかさねられていく視点の重層性が面白かったです。

知的な雰囲気に満ちた叙情性ってこういうのかなと思いましたw

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