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『イオニアの風』

イオニアの風
光原 百合
4120040445



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読了。

ギリシア神話をベースに人と神の関係を明るめに描く古代ファンタジー小説。

『銀の犬』でケルト風ファンタジーを書かれた光原百合さんの新作は古代地中海世界が舞台。

ギリシア神話の神々が行う人間に対する賭けをトロイア戦争とオデュッセイアを軸に描いています。

第一部はスパルタの女王ヘレネとトロイアの王子パリスの不倫からギリシア諸国とトロイアの戦争になるというトロイア戦争そのもののストーリー。

第二部はオデュッセウスの息子テレマコスとパイキアの王女ナウシカアが主役で、いにしえの怪物エンケラドスを倒すための戦い。

それらを対象に、神々が人間との関わりを断つかどうかを賭けるというストーリー。

完全に伝説になぞっているわけではなく、ストーリー展開に沿った改編があちこちに散見されます。カッサンドラがいない!

文章はとてもよみやすかった。熱出しながら読んでたわけですが、苦にならなかった。分厚いハードカバーであることを忘れさせる、あかるさと軽妙さがなんともいえません。

登場人物もラノベほどではないにしろキャラクター立っていて、脳裏にうかんでくるのがアニメ絵だったりして。

神々の言葉遣いすらすこしくだけすぎかなと思われるくらい明るくて、でも違和感がないのは、これが燦々と陽光のそそぐ地中海を舞台にしているからじゃないかな、などと感じました。

そのあたり、『銀の犬』の幽玄を期待していた私は当てが外れたのですが、読み応えはたっぷり。

人間の意志は自分の選択を自分のものと自覚して運命を切りひらいていくためのものである、という首尾一貫したテーマのもとにくり広げられるストーリーにぐいぐい惹きつけられて読みました。

ただちょっとバランスが悪いかなと思いました。著者が書きたかったのはぜったいに第二部のほうだと思うしそちらのほうが分量もあるのに、第一部が戦争なんて派手なものを扱っているせいか、そちらのほうがなんとなく重たいんですよね。密度が濃いというか。

いっそ、第二部だけでまとめてしまえばいいのにと思いましたが、この前日譚がなければ全体をまとめる神々の賭けとしては弱いしなー。

イタケのオデュッセウスのエピソードが読んでいていろいろとても楽しいので、それがないとなると寂しいし。

考えてみればこの話はオデュッセウスの血筋にかかわるものたちの話でもあるのですよね。

伝説を読んだときには、戦争にかり出された後、なかなか故郷に帰れないオデュッセウスがとんでもないまぬけと見えたものですが、ここではかなりのイイオトコです。

人間たちを陰に日向に応援するヘルメス神も楽しかったし。

……と、ここで気づきました。
そうか。第二部よりも第一部のほうが主役が大人で、大人なテーマを扱っているから重く感じるんだ。

第一部が不倫のはての責任のとり方なのに、第二部が親離れと自分探しがテーマじゃ、それは拍子抜けする。対象年齢が下がってるんだもの。

というわけで第一部はラノベ風の、第二部は児童文学の香りを放つ、古代ギリシアファンタジーだったなあと、思いました。

面白かったです。

でも私は『銀の犬』のほうが好みですw

銀の犬 (ハルキ文庫)
光原 百合
4758433410

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