『冬の薔薇』

冬の薔薇 (創元推理文庫)
パトリシア・A・マキリップ 原島 文世
4488520103



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読了。

近代欧米風な田園と森を舞台にした、生と死、夢とうつつを往還する幻想ファンタジー。


農家の次女として生まれたロイズは素足で森に通い、花や薬草を集めるのが得意な少女だ。ある日ロイズは、薔薇の茂みの影に見つけた泉の水をすくったとき、森から黄金の光がこほれおち、ひとりの若者の姿に変じるのを目にする。その後、村には森の奥の館の跡取りと名乗る人物が現れた。その名前はコルベット・リン。かれの存在は村にセンセイションを巻き起こす。なぜなら、リン家は息子が当主を殺害して行方不明になったときに絶えており、当主は死に際に自分を殺す息子を、自分とおなじように死ねと呪ったと伝えられていたからだ。ロイズはコルベットから目が離せなくなるが、コルベットが視線を交わすようになったのは春に結婚を控えたロイズの姉ローレルだった。




ふはー。なんというファンタジー度の高さ、というか深さ?
初めから終わりまで、夢とうつつ、生と死の狭間を行ったり来たりしつつ、その境目が曖昧なまま、どこを読んでいても言葉で魔法にかけられているようなそんな心地にさせられる、ひそやかで冷ややかで鮮やかで冷酷で、熱に浮かされた夢のようでもある、とにかく言葉に尽くせないほどに陶然とさせられるお話でした。

話のベースはスコットランドの民間伝承「若きタム・リンのバラッド」なのだそうですが、話の構造は重層的であちらこちらにエコーがかかって、登場人物の関係があちこちで響きあっているような、全体を魔法で織りあげたようなそんな物語世界になっています。

ロイズというヒロインの一人称が、その不思議さをまた増長しているような気がする。

二つの世界を見る目を持ち、二つの世界をかろやかに行き来していたロイズなのに、彼女のその資質そのものが苦しみをもたらすようになっていく、その過程を追いかけることによって、過去と現在が繋がり謎が解けていく。そのへんの展開がとても痛々しく、美しく、哀しかったです。

この世界では森ははっきりと異界ですね。
色鮮やかな春夏秋と冬の対照的な描写がとても印象的でした。
ここでは冬は死そのものであり、異界とこの世の違いをはっきりと証立てるもの、なのかなあと思いました。

とにかく、ファンタジー読んだぜ!!!!
という気分になれるディープな幻想譚でした。
大好きですv

ところで、この話の舞台ってアメリカな感じがするんですが、どうでしょう。
十九世紀から二十世紀初頭のアメリカ。もしくはカナダ。
イングランドやスコットランドじゃないような気がするのです。
トウモロコシとか育てているからかな……。

現代を舞台にした関連作品があるらしいので、ぜひ訳出して出版して欲しいなあと思います。

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