『ゾティーク幻妖怪異譚』

ゾティーク幻妖怪異譚 (創元推理文庫)
クラーク・アシュトン・スミス 大瀧啓裕
448854102X



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読了。

科学文明の滅びた地球にある大陸ゾティークを舞台にした退廃的・魔術的・東洋趣味的な怪異幻想短編集。

ラヴクラフトなどと同時代にパルプ・マガジンで活躍したクラーク・アシュトン・スミスの、怪奇幻想譚集です。

詩人でもあった著者の絢爛豪華な筆で描き出される、腐乱死体のような世界の魔術的な出来事に魅せられました。

異形の魔神たち、降霊術師、呪術師、死体置き場管理人、退廃しきった王などなど、登場人物も末期的(苦笑。

平凡な一個人の日常とはかけ離れた、あらゆる意味で魔的で負の雰囲気が漂う、終末的な雰囲気は、まるで腐り落ちた果実が爛れていくかのよう。

前向きさなど欠片もない未来の終末神話の世界で生きる、伝説の人物の冒険譚、という感じで読みました。

物語はそのまんまのひたすら怪異と出会う恐怖のお話、怪異と出会って数奇な運命にたどり着くお話、登場人物そのものが怪異となる話、幽霊譚、とヴァラエティーに富んでいますが、そうじて皮肉に満ちていて、暗いながらも滑稽譚であることが多いような。

絢爛豪華なのに無駄の少ない文章が、作品の色合いを濃く染め上げているのが印象的でした。

以下、収録作品です。



ゾティーク
降霊術師の帝国
拷問者の帝国
死体安置所の神
暗黒の魔像
エウウォラン王の航海
地下納骨所に巣を張るもの
墓の落とし子
ウルアの妖術
クセートゥラ
最後の象形文字
ナートの降霊術
プトゥームの黒人の大修道院長
イラロタの死
アドムファの庭園
蟹の支配者
モルテュッラ

 言葉の魔術を駆使する吟遊詩人 大瀧啓裕




余談。

読み終えるのにえらい時間がかかってしまった。
いったい何ヶ月抱えていたんだろう……と調べてみたら、読み始めたのは九月の六日でした(汗。

時間がかかった理由は、ずばり、訳文が体質に合わなかったからです。
意を尽くして最上の結果をと熱意たっぷりに訳してあるのは感じるのですが、私にはどうもすっと馴染んでこない文章だった。頭の中でいちいち文意を推理しつつ読んでいるので手間がかかり、そのうち睡魔に大敗を喫するというくり返し。
読みながら寝てしまうとどこまで読んだかも曖昧で、また冒頭から読み返したりと非効率このうえない読書でした。

それでも読み続けたのは面白かったからなのですが。

おそらく、私の頭が物事を理解する順番が、訳者の方の順番とことごとく異なっているんだと思う。

おなじクラーク・アシュトン・スミスの『イルーニュの巨人』はこんなに苦労をした覚えがないので。

その翻訳者の方が解説で「文体を楽しむには高度な技術が必要」であると書いておられるのを読んで、うはーと思ってしまいました。
きっと私にはその技術が欠けているのね(汗。

でも本の解説で別の本の翻訳を批判するのはどうでしょう。
タイトルや作者を明示していないから、知らない読み手には何のことだかわかりません。


イルーニュの巨人 (創元推理文庫)
4488541011

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