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『ラウィーニア』

ラウィーニア
アーシュラ・K・ル=グウィン 谷垣 暁美
4309205283



[Amazon]


読了。


ウェルギリウスの叙事詩『アエネーイス』を元に、古代イタリアで戦の原因となった王の娘ラウィーニアの生涯を描く、古代ファンタジー。


イタリアのラティウムの王女ラウィーニアは、幼い頃より母親アマータに虐待されて育った。欲しかった息子を生んですぐに亡くした母親は哀しみの狂気のなかで生きつづけていたのだ。妻の狂気と向き合おうとしない父王だったが、ラウィーニアのことは慈しんでくれた。ラウィーニアは一族の聖地アルブネアに父親と詣で、儀式ののちに兆しを受け、読み解く父の姿を目にしていた。ラウィーニアが年頃になった頃、母親は甥であるルトゥリア王トゥルヌスの求婚を受け入れるようにラウィーニアに圧力をかけ始めた。ラウィーニアに求婚するものはほかにもおり、それは次第に争いに発展しそうになっていた。ラウィーニアは従兄弟のトゥルヌスが自分を獲得するに値するモノとしてのみ認識していることを知っていた。ラウィーニアは、聖地アルブネアで過ごした夜に、後世に彼女の生きた時代を詩につくっているという死に際の詩人と邂逅する。詩人はトロイア戦争によって故郷を失った武将アエネーアスとラウィーニアの結びつきについて語り始めた。




面白かった!
夢のような回想のような、幻想的な構成でありながらも、細部はとてもリアルで地に足がついていて、人間くさい。
まさにル=グウィン、さすがル=グウィン、と唸らせる素晴らしい物語でした。

欧米ではラテン語はもう必須教養ではなくなっているのですね。
偉大な過去の遺産も、読まれなければ受け継いでいくことはできない。
というわけで、『アエネーイス』も幾度も英語による翻訳が試みられてきた模様です。

しかし散文の翻訳だって原文の持つ味わいを伝えるのは至難の業。
まして韻文は、言葉の響きそのものが抜き去りがたく作品に結びついている。言葉の持つ韻律、響き、抑揚までをそのままべつの言語で再現することは不可能だといっても過言ではないでしょう。

作者は、ウェルギリウスの『アエネーイス』をなんとか英語に写し取りたいと願いましたが、それを自身のできうる最高の形式――小説の形式に落とし込むことで試みたのだそうです。

『アエネーイス』ではほとんど存在感のないラウィーニアをヒロインに据えたこの作品は、『アエネーイス』未読の私にはそれとくらべることは不可能ですが、この作品単独で読んでも十分に読み応えのある、格調高いファンタジーになっていると思います。

ギリシア神話や伝説に頻繁に出てくる神々の存在を、信仰するひとびとを描くことによって背景にしたことも、余計な干渉でごちゃごちゃしがちなストーリーをすっきりとさせ、ひとの物語を際だたせることになってると思う。つい先日読んだトロイア戦争を題材にしたファンタジーは神と人の物語でしたが、これはあくまでも神威を身近にしながらもみずからの意志をもつ人間の物語だなあと思いました。

ラウィーニアの出会う詩人の存在は、彼女がこれからもつづいていく歴史の一員であるとともに、詩人によってつくられた存在であることも匂わせて、とても刺激的でなおかつファンタジー的。

この大枠がなければ、話はただの歴史ファンタジーになっているよね……。

ラウィーニアは母親に虐待されつつも正しいこと、善きことを求める現実的でしっかり者の娘。
若く美しく粗暴で権高いトゥルヌスは、愛されすぎて大人になれないわがまま息子。

登場人物はみなそれぞれに個性と血肉をそなえた人々でしたが、なんといってもアエネーアス。
若い頃から一族郎党を率いて苦難の放浪をしてきたアエネーアスの、思慮深くひかえめながら経験豊かで懐の深い男ぶりがたいそう格好良かったですv

四十男で、やもめで、子持ちなんですが、ラウィーニアが好きになる気持ちはよーくわかる。
もしかすると、作者の理想の男性でもあるのかもーw はっ、これもかなりの年の差カップルですな。最近多いな、年の差カップル。もしかすると時代は年の差にあるのかも。

閑話休題。
読み終えたときにしみじみとしてしまう余韻は、やはりル=グウィンだなーと思いました。
堪能堪能。
お腹いっぱいすみずみまであじわいました。

ファンタジー読みには超おすすめです。

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