『夢の蛇』
夢の蛇 (1983年) (サンリオSF文庫)
ヴォンダ・N・マッキンタイア 友枝 康子

[Amazon]
読了。
核戦争によって文明が滅んだのちの地球を舞台に、治療師としてひとり各地を放浪する女性の旅を描く、叙情的冒険SFファンタジー。
ああ、面白かった。
実は再読です。読んだのは二十年以上前。まだ読書技術と読書視野が拡張されておらず、ただひたすら文章を追いかけるだけだった頃に読んで、ああ、この本はとても好きだと感じた記憶だけが残っていた、そういう本でした。
そんな本を今もまだ面白いと思えるのか、すこし不安でしたが杞憂に終わりました。
やっぱり、とっても面白かった。ただ、初読の衝撃はなかったけれど、それは私がこういう本を読み慣れてしまったからだとおもわれます。
舞台は核戦争後の地球。
ひどひとは小集団ごとに切りはなされて、それぞれに孤立していきのびています。
ただひとつ、中央と呼ばれる都市のみがかつての文明の遺産で食いつなぎ、どうやら異星人との交信を独占している模様。
主人公のスネークが〈治療師〉として駆使するのは、必死で受け継ぎ残してきた医療技術と、蛇の毒素から抗体を作りそれによって病を癒すすべ。
なかでも夢の蛇は麻酔作用と幻覚作用のある毒を持った小さな蛇で、繁殖がほとんど不可能なため、クローン技術によってわずかに手に入れることのできる希少な蛇である、ということになっています。
そのため治療師の数は少なく、各地をくまなく訪れることはできず、その治療法を知らぬ人には恐れられ、嫌われる。
というような状況で、この話は始まります。
描写主体の、スネークの見て感じたことをなぞるような文章は、SFというよりファンタジーに近い雰囲気。
誤解によって生まれた悲劇のかたわらで出会ってしまった男と女のものがたりを背景に、蛇を失った治療師の陥る困難と中央からきた女性との出会いと別れ、スネークをつけねらう謎の強盗、一見裕福で幸せそうな集落の影に隠された傷つけられた心の叫びとその救出、などなど、起伏の大きいエピソードがつぎつぎにでも淡々と、つづられていきます。
以前読んだときの記憶は、砂漠を旅してたということしか残ってませんでしたが、実際は砂漠だけでなく山間の町や、治療師の養成所、中央の高い壁、さらに壊れたドームなんかも出てきます。それらのすべてを私は忘れ去っていたわけですね、それで私はこの話のどこを好きだと思ったのか……(汗。
それはたぶん、スネーク視点であらわれ次第にあきらかになっていく物語世界の状況、孤立したが故にユニークな風俗をもつ人々の暮らし、生活感漂うこまやかな描写、情感豊かな風景描写、などなどだったのだと思われます。
そして今の私もそういう部分に最も惹かれているわけで、やっぱり私の好みはずっと一貫しているのかなあと呆れるような安心するような気持ちになりました。
さらにおそらくかつては読み飛ばしていただろう、物語世界全体の設定にも、今回はかなりの興味をかきたてられました。
最後まで謎の残る設定ですが、そのすべてがわからないままな感じを世界の拡がりと感じてしまうのが、ファンタジー読みとしての私なのかもしれないと思いました。
というわけで、二度読んでも面白い本ですと保証いたします。
しかしサンリオSF文庫はもうない。
ハヤカワSF文庫から復刊されていた本もたぶん絶版なのです。
こんな素敵な本なのになんということだ……。
夢の蛇 (ハヤカワ文庫SF)
ヴォンダ・N・マッキンタイア 友枝 康子

ヴォンダ・N・マッキンタイア 友枝 康子

[Amazon]
読了。
核戦争によって文明が滅んだのちの地球を舞台に、治療師としてひとり各地を放浪する女性の旅を描く、叙情的冒険SFファンタジー。
スネークは女性治療師。その技は多くを三匹の蛇を駆使することによって効果を上げる。滅多に治療師の赴かない砂漠の集落を訪れたスネークは、子供の治療中に治療師の術を恐れるひとびとによって夢の蛇〈草〉を殺されてしまった。夢の蛇は数が少ない貴重な蛇だ。あずけてくれた師たちの期待に背いたと感じ、夢の蛇を失った自分の治療師としての資格に危機を覚えたスネークは、代わりの夢の蛇を求めてさらなる旅に出る。
ああ、面白かった。
実は再読です。読んだのは二十年以上前。まだ読書技術と読書視野が拡張されておらず、ただひたすら文章を追いかけるだけだった頃に読んで、ああ、この本はとても好きだと感じた記憶だけが残っていた、そういう本でした。
そんな本を今もまだ面白いと思えるのか、すこし不安でしたが杞憂に終わりました。
やっぱり、とっても面白かった。ただ、初読の衝撃はなかったけれど、それは私がこういう本を読み慣れてしまったからだとおもわれます。
舞台は核戦争後の地球。
ひどひとは小集団ごとに切りはなされて、それぞれに孤立していきのびています。
ただひとつ、中央と呼ばれる都市のみがかつての文明の遺産で食いつなぎ、どうやら異星人との交信を独占している模様。
主人公のスネークが〈治療師〉として駆使するのは、必死で受け継ぎ残してきた医療技術と、蛇の毒素から抗体を作りそれによって病を癒すすべ。
なかでも夢の蛇は麻酔作用と幻覚作用のある毒を持った小さな蛇で、繁殖がほとんど不可能なため、クローン技術によってわずかに手に入れることのできる希少な蛇である、ということになっています。
そのため治療師の数は少なく、各地をくまなく訪れることはできず、その治療法を知らぬ人には恐れられ、嫌われる。
というような状況で、この話は始まります。
描写主体の、スネークの見て感じたことをなぞるような文章は、SFというよりファンタジーに近い雰囲気。
誤解によって生まれた悲劇のかたわらで出会ってしまった男と女のものがたりを背景に、蛇を失った治療師の陥る困難と中央からきた女性との出会いと別れ、スネークをつけねらう謎の強盗、一見裕福で幸せそうな集落の影に隠された傷つけられた心の叫びとその救出、などなど、起伏の大きいエピソードがつぎつぎにでも淡々と、つづられていきます。
以前読んだときの記憶は、砂漠を旅してたということしか残ってませんでしたが、実際は砂漠だけでなく山間の町や、治療師の養成所、中央の高い壁、さらに壊れたドームなんかも出てきます。それらのすべてを私は忘れ去っていたわけですね、それで私はこの話のどこを好きだと思ったのか……(汗。
それはたぶん、スネーク視点であらわれ次第にあきらかになっていく物語世界の状況、孤立したが故にユニークな風俗をもつ人々の暮らし、生活感漂うこまやかな描写、情感豊かな風景描写、などなどだったのだと思われます。
そして今の私もそういう部分に最も惹かれているわけで、やっぱり私の好みはずっと一貫しているのかなあと呆れるような安心するような気持ちになりました。
さらにおそらくかつては読み飛ばしていただろう、物語世界全体の設定にも、今回はかなりの興味をかきたてられました。
最後まで謎の残る設定ですが、そのすべてがわからないままな感じを世界の拡がりと感じてしまうのが、ファンタジー読みとしての私なのかもしれないと思いました。
というわけで、二度読んでも面白い本ですと保証いたします。
しかしサンリオSF文庫はもうない。
ハヤカワSF文庫から復刊されていた本もたぶん絶版なのです。
こんな素敵な本なのになんということだ……。
夢の蛇 (ハヤカワ文庫SF)
ヴォンダ・N・マッキンタイア 友枝 康子

Comment
Comment Form
Trackback
| HOME |