『七姫幻想』

七姫幻想
森谷 明子
4575235407



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読了。


古代から近世まで、七夕の七姫をモチーフに織女の系譜につらなる女たちと男たちの物語を落ち着いた文章でつづる、連作短篇集。

とても面白かったです。
最初はファンタジーだと思ったのですがそれは最初の一編だけで、あとはほとんどがミステリ。
でもって、男と女の恋愛模様が、それぞれの時代背景にそったエピソードで描かれていきます。

たぶん、物語の主要な登場人物はみなひとつの血族に属しているのだと思う。

時代が下るに従って、時を紡ぎ、時代を織りなし、神とつうじる水の巫女の記憶も能力も薄れていきますが、糸を紡ぎ織りつづける女という、じつに普遍的なファンタジー要素が最後まで折り込まれていて、一本筋が通ったというか、ひとつの太い糸でつながれている、在る系譜のひとびとの年代記としても読めるなあと思いました。

収録タイトルは以下の通りです。


ささがにの泉
秋去衣
薫物合
朝顔斎王
梶葉襲
百子淵
糸織草子




「ささがに」って何? と思ったら蜘蛛のことでした。

ことほどさように日本の知識に暗い私。翻訳物ばかり読んでたから、ここで取りあげられている時代もその背景もうすらぼんやりとしか推測できないのですが、明言されないながらそこかしこに「あの時代かな?」と推理できる要素が奥ゆかしく記されていて、歴史ものではなく時代ものっぽい雰囲気なのも好みでした。

舞台は当初の古代から次第に時代を下っていくのですが、平安朝が舞台の話が多かったような気がします。

神話伝説時代から古代、平安朝ときて、中世があいまいなまま近世に進んでしまったような。
舞台が奈良と京都を中心としているので、武士があまりでてこないところがそう感じさせたのかな。
いきなり江戸時代の話になったときには、あれっと思いました。

「ささがにの泉」がファンタジーだったのは、神話伝説の時代が舞台だったからかも。
私としてはこのテイストがつづくのかと期待してたんですが、見事に裏切られましたな。

読んでいちばん爽やかだったのは「朝顔斎王」。ヒロインが生臭いことから切りはなされている元斎王だったからか。

反対に「梶葉襲」はミステリ要素がもっとも高い話。話の完成度も高い気がしますが、かなり陰険で後味が悪かった。どちらも後宮がらみの話なのだけど、外から見たのと内部関係者の話ではドロドロ度が違います。

このへんの平安京を舞台にした話はおんなじ名前のことなる人物が幾度も登場するのが因縁みたいでぞくぞくしました。

日本史に対する無知をあらためて実感したので、これからは和物も読もうと思います。
やはりフィクションから入るのがお手軽ですよね……お堅いものは下地をつくってからにしようっと。

ところでこの本はすでに文庫化されていました。

七姫幻想 (双葉文庫)
森谷 明子
4575512540


図書館にはなかったんですが……(汗。

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