『テスタメントシュピーゲル 1』

テスタメントシュピーゲル 1 (角川スニーカー文庫)
冲方 丁 島田 フミカネ
4044729093



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借りて読了。


近未来の国際都市ウィーン=ミリオポリスを舞台に、機械化義肢によって武装化した〈特甲児童〉たちがみずからの都市と自由と人生のためにテロリストと戦う、アクションSFミステリ。『スプライトシュピーゲル』『オイレンシュピーゲル』を統合するシリーズ完結編開幕。


西暦2016年。MPB(ミリオポリス憲兵大隊)所属の特甲児童、猋(ケルベルス)遊撃小隊の隊長・涼月は、接続官の少年吹雪とともに休日を過ごしていたところ、MSS(ミリオポリス公安機動隊)所属の特甲児童で過去の事件で知り合った“あたくし様”こと焱(スプライト)要撃小隊隊長・鳳が少年とふたりでいるところに出くわした。少年・冬真と吹雪が意気投合したためなりゆきで行動することになった四人は、思いもかけない楽しい時を過ごすが、涼月と吹雪への任務の呼び出しに再会を約して別れた。涼月を待っていたのは〈ローデシア〉を名乗る集団がミリオポリスに仕掛けたロケット燃料を応用したAP爆弾だった。爆弾の無力化にむけて出動する猋。だが、敵による情報汚染。過去の事件でも遭遇した謎の狙撃手。つぎつぎに襲いかかる敵の妨害に分断されてしまった小隊の視界を警告の黄色が染め上げる。夕霧の脳裏に浮かびあがる、ある数字の羅列。そのとき地下にあった本物のAP爆弾が爆発した。




うはー……すごかった……。

これまでの事件の複雑な構造と関係性、物語展開の吸引力、アクションシーンの疾走感と破壊的なエネルギー。
登場人物たちがそれぞれに背負った過去と現在の日常、フクザツで意味深ででもシンプルなやりとり。情熱、こころざし、使命感、自己犠牲を、からりとでも熱く語る台詞としぐさ。

すみからすみまで細かいところまで練り込まれた、とても重層的で密度の濃い、どこをとっても熱い血の滴るような、渾身の完結編、スタートでした。

スプライトとオイレン、ふたつのシリーズが合流し、二つの小隊が追いかけてきた事件がすべてひとつながりに見えてくる瞬間。
特甲児童たちは事件を追いかけているのではなく、かれらが事件そのものだったとわかる瞬間。

背筋のぞくりとするような感覚を覚えました。
あまりにも非情で痛ましい、殺伐とした展開。
泣きながら悲惨な過去と立ち向かいつづける彼女たちの姿が、せつなくていとおしくて。

そしてまた、敵味方のわからない不安と緊張。
何が善で何が悪なのか。
誰が善で誰が悪なのか。
あるいは善が善をなすために悪を呑むことも、あるのかもしれない。

だからといってそれは許されるのか。
けれど信念に基づいて行動するひとの眼に曇りはなく。

希望はあるのだと、つかむことができるのだと、主張している。

そして事件によって破壊された人生だって、あたらしく始められるのだと。
望みを持って努力すればと。

あまりにも苛酷で悲惨な事件の連続で、特甲児童たちに襲いかかる試練はメガトン級ですが、このシリーズ、根っこの所では青少年が疑問を抱いていたみずからの生を肯定するためのお話なんだなあと思われました。

でもって、そのために動員されている知識の量が半端でなくものすごく、この国際的なパワーゲームの感覚や人権意識の感覚は、著者のそだってきた環境がものを言っているのかなあなどとぼんやり思ってみたりした。

読み応え、ずしり。
なのにこの疾走感と酩酊感。

まさに最後のライトノベルに相応しい幕開けだと思います。

血反吐を吐くような展開つづきで息も絶え絶えで読み切りましたが、もうすぐにでも続きが読みたいです。

なにしろ、終わりのところで「こんなところで切るな!」と心の中で叫びましたからねえ。
妖精の小隊長はいったいどうなっちゃってるのー、夕霧はいったい誰とお話ししているのー、白露君はなんでそんなものを飲みたがるようになってしまったのー、と疑問は尽きません。

とにかく、はやくつづきをっ!


余談。

吹雪君たち接続官が〈コーラス〉と呼ばれるのは、少年合唱団から来ているのだろうかとふと思った。

ヘルガさんの過去の因縁関係って、『カオスレギオン』とちょっと似ていないかなー、やっぱり似てないかも。でもなんとなく似ているような。

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