『鳳船の書 暁と黄昏の狭間VI』

暁と黄昏の狭間VI 鳳船の書 (トクマ・ノベルズEdge)
西魚 リツコ D-SUZUKI
4198508402



[Amazon]


いただいて読了。


世界に潜む力を利用しすぎたために起きる災厄を人間同士の争いとともに大きなスケールで描く、魔術的異世界戦乱ファンタジー。シリーズ完結編。



解き放たれたボルジの呪いとともにリヴォから脱出したセフルは、ギルダン・レイの命でセゲドの民をドムオイへ導くことになった。ところが渦の海で雇った水先案内人によって水賊に船ごと売り渡されてしまう。水賊の頭領ハンチェッタの元には、友人の魔術師エイメ・バジールの姿があった。セフルと別れ、ボルジの呪いを解くミリディアンとともにリヴォ救済のために発ったギルダン・レイは、ミリディアンのうちに潜んでいた大魔術師サイヤーレに呪縛され、ボルジの呪い拡大のために奉仕させられることになる。いっぽう、ボルジの呪いを解きはなった汚名を着せられたリヴォ参謀総長ケリード・ゼメスタンはリヴォ貴族マナ一族とともに、属国から反乱ののろしを上げた。




読み終えてはーーーっと盛大な溜息をつきました。

なんという圧倒的な物語なのでしょう。
次から次へと変転する登場人物たちの状況もそうですが、次から次へとあらわれる圧倒的な力の及ぼす影響力にボウゼンです。

砂漠のオアシスで人々が崇めた水の神の裏の顔が、こんな災厄をもたらすものだとは。
すべてを押し流してしまう水害ならまだ想像の範囲内だったのですが、まさかまさか、こんなかたちで呪いが現れようとは、思いもよらなかったです。

でも、冷静に考えてみれば、生態系の変化によって生物にさまざまな影響があらわれるのは当然のこと。
災厄の単純で直接的な形は自然災害ですが、疫病だってそのひとつの現れなのですよね。

それにしても病に冒されたひとびとの狂乱のすがたは、まさに神の呪いによってその力に押しつぶされ、自分の意志を失ってちからに奉仕するだけの存在となり果てたもはや人ならぬモノ、としか思えませんでした。

把握しきれない巨大な力を操ろうとした結果が招いた、壮大なしっぺ返しのようでした。

その最大の標的となったギルダン・レイとサイヤーレの、緊張感つづく精神的な攻防戦に手の汗握りつつ、ギルダン・レイにすべてを託されながらも最愛の人の心を信じ切れないセフルの奮闘が健気です。

水賊に捕まったり、渦のなかに放り出されたり、故郷の村に帰ったら帰ったで身内から非難囂々、なんと報われない人生を歩んでるんでしょう。

それでも自分のすべきことを確実に見いだしていくセフルによって、物語も着実に進んでいきます。

ほんと、主役ってなんて損な役回りなんだろう……というのがセフルちゃんに対する私の感想です。

いっぽうで美味しいところをすべてさらっていったのがケリード・ゼメスタン。
かれは災厄の中心から前進するセフルちゃんの手助けをする存在として、世界の今の状況をセフルちゃんに伝える存在として、さらにギルダン・レイの真実を見極める存在として、縦横無尽に活躍してました。

クラスマックスでは、すべての物事が別の次元に上昇していくような、壮大なスケールの力の発現に酔いしれました。

そして、ラスト。
このラストの開放感は、なんとなくSFに近いもののような気がしました。
そして、ワンをすべて把握し管理しようとしたヘン=ジャックたちは、つまりは知識欲の塊のようなとても人間的な人々だったのだなーと思いました。

最後まで、すべてが物語世界と物語に奉仕する、とてもストイックなお話だったなーと思います。
運命に翻弄されつづけた人々が最後に穏やかな居場所をみつけることができて、本当によかった。

ひさしぶりに重量級のファンタジーを読んだなという気持ちにひたった読後感でした。

面白かった!

Comment

Comment Form

管理者にだけ表示を許可する

Trackback


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)