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『なつかしく謎めいて』

なつかしく謎めいて (Modern & classic)
アーシュラ・K・ル=グウィン 谷垣 暁美
4309204503



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読了。


様々な異次元を旅行者の視点から描くSF短篇集。

またル=グウィンです。ル=グウィンにはまりそうだ。
今回はファンタジーではなく、情や魂ではなく理知的な視点の印象がつよい、紀行エッセイ的な短篇集です。エッセイといっても行く土地は架空のものだから、SFなのです。

飛行場で搭乗待ちをする退屈で無意味な時間に、ちょっとどこかに遊びに行けるようになったら、という設定で異次元観光をするという、要はほら話なのですが、ほらは自分を大きく見せようとするものではなく、その世界の特異な部分つまり設定部分にあらわれています。

もし、あらゆる生き物に遺伝子改良を施す世界があったら、もし、夢をすべての生き物で共有する世界があったら、もし、言葉をほとんど口にしない世界があったら、もし、季節ごとにすべての人が渡りをする世界があったら、もし、王族だらけの世界があったら……。

つまり、すべてはifの世界。

ときに風刺的な寓話のようだったり、SF設定のファンタジー風味だったり、滅びた文明の伝説のようだったり、いろんなテイストの話があって、様々な楽しみ方のできる本でした。

観察者視点で語られる話なので適度に距離があり、わりとかろやかに読める感じがした。
読後感はずしりとくるものもありましたが。

以下、収録作品です。


はしがき
シータ・ドゥリープ式次元間移動法
玉蜀黍の髪の女
アソヌの沈黙
その人たちもここにいる
ヴェクシの怒り
渡りをする人々
夜を通る道
ヘーニャの王族たち
四つの悲惨な物語
グレート・ジョイ
眠らない島
海星のような言語
謎の建築物
翼人間の選択
不死の人の島
しっちゃかめっちゃか

訳者あとがき




一編一編が密度の濃い、それだけでも読み応えのある話ばかりで、読み終えるのにかなり時間がかかりました。ひとつ終えるたびにいろいろと考えさせられてしまいまして。

現代文明の風刺として読める話がたくさんあってそれらもとても面白かったですが、私は文化人類学的な要素を含んだ話のほうが好きだし、楽しく読みました。

とくに一番好きなのは「渡りをする人々」だなー。

思考実験的なものはまさにSFという感じがしました。眠らない天才児たちの話は悲惨でした。
翼人間もほとんどはそうなんですが、でも翼のあるなしでの意識の違いにうーんと唸ってしまった。

読み終えて思ったのは、ル=グウィンの作品において、SFは観察者的な立場で書かれているものが多いのかなーということ。
それに比べるとファンタジーは視点が内側にある気がする。
というのも、おぼろな記憶から言っているので確かなことではないのですが。

大昔に読んだ『ロカノンの世界』とか『闇の左手』とか、ほとんど覚えていないのでまた読み返したくなりました。

というか、読み返したいです。

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