『獣の奏者 III 探求編』

獣の奏者 (3)探求編
上橋 菜穂子
4062156326



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いただいて読了。


謎の生き物闘蛇と聖獣。それらを象徴する一族を柱とする国で、だれにもできない聖獣を操る術を得たがために様々な争いに巻き込まれることになった女性・エリンの生き方を描く、生活感たっぷりの異世界ファンタジー。第三巻。



〈降臨の野〉での事件から二十年。リョザ神王国で獣の医師となったエリンは大公のよこした護衛と共に闘蛇衆の住む隠れ村に赴いた。この村では闘蛇の〈牙〉がいっときに全滅したという。母親の死のきっかけとなった過去の苦い記憶を噛みしめながら、〈牙〉の死の原因を探るエリン。禁忌とされる腑分けまでして突き止めたのは、死んだ〈牙〉がすべておなじ年齢のメスであるということだった。夫と息子から離れ、交尾期を迎えた聖獣リランを放置していることが気になるエリンだったが、護衛ヨハルの強い要請によって〈牙〉の大量死の発生例がない最古の闘蛇村に向かう。そこで意外な過去の真相を垣間見たエリンだったが、突然何者かによって襲われ、拉致されそうになる。




第二巻の聖獣編で完結したのだと思っていた『獣の奏者』。
二十年間のインターバルを挟んでのつづきは、初めから周到に用意されていた物語でした。

エリンの母親の謎の言葉や行為が、ここでこんなに生きてくるなんてぜんぜん想像してなかった。
霧の民だった母親の闘蛇に対する態度の原因がおぼろにつかめたとき。その嘆き、苦しみ、哀しみが、今度はエリンのものとして甦るのです。

そしてエリンにも今は守るべき息子と夫がいます。
十代からの二十年は人生の激変期ですもんね。
でもエリンはこの二十年をおおむね幸せに過ごしてきた模様です。
三十代になったエリンの年齢を感じさせるあちこちの文章にはちらと笑みが浮かんだり、そうなのよねーと共感したりしました。

でも、その幸せな時間は終わりを告げたと、エリンは自覚します。
そもそものはじめから、穏やかに過ごせる時間は少ないと彼女と彼女の夫は予期していた模様。

こんな期限付きの幸せって……と思いつつ、だからこそ時を惜しんで大切に過ごしてきたのだろうなという想いにひたってしまい、緊迫した展開のなかでふり返られる過去に胸が苦しくなったりしました。

〈牙〉の大量死から見えてきたのは、建国神話の裏に隠されてきた真実。
真王の系譜が聖獣を、太守の系譜が闘蛇を、それぞれにあずかり受け継いできたことの本当の意味はなんなのか。

リョザ神王国をおびやかす大国の存在と、いまだに一体感を持てずにいる国民たちの板挟みになって苦悩する大公シュナン。真王としての自分に自信が持てないセィミヤ。

ゆれうごく王国の内外情勢に次第に絡めとられて身動きできなくなっていくエリンたちの姿が、とても痛々しい展開でした。

この先、どうなるのかわかりませんが、なんとなく大団円は望めないような気がするなー。

ところで、リョザ神王国って将軍家と天皇家の婚姻が成功した開国間際の日本のシンプル版、のような気がします。

シンプル版なので外圧はひとつに絞られ、大公家と真王家の結びつきもごく単純にわかりやすくなってます。

そうすると〈血と穢れ〉は新選組みたいなものかなーとか(苦笑。

それから闘蛇と聖獣に与えられている特滋水ってホルモン薬だよねーとか。
どうやって特滋水をつくるのか忘れましたけど、牙を大きくするのだからきっと男性ホルモンに違いない。

忘れたと言えば、第二巻までの話をワタクシあらかた忘れておりました。
エリンがリランに会って笛なしで育てるあたりまでは覚えているのですが、そのあとの真王と大公が出てきたあたりからごっそり消えていた(汗。

それでも混乱せずに読めたのは、年末にたまたまエリンのアニメをチラ見したおかげです。
イアルなんてアニメを見なかったらほんとに忘れたままだったよ。なんという薄情者でしょうか。
〈堅き盾〉、ああそんな人たちもいたっけ……てな世界でした。盛大に反省しています。

エリンの息子八歳のジェシは口が達者すぎるのが特徴の男の子。
八歳の男の子にしてはいろいろ観察できる子だなー。

この子が重苦しい雰囲気を和らげているのは確かなんですが、この子視点のシーンはちょっと話の次元がいきなりずれる気がして読みにくかったです。視点人物が大人ばかりの児童書はつらいかもしれないけどね。でもこれって児童書なのかという疑問も。

本の仕様は児童書だなと思います。
字は大きく字間もひろく、余白がいっぱいとってある。

そのためか、ハードカバーだぞと身がまえたわりにはさくっと読めました。
いただいて読んでいるのになんですが、自腹を切ってたら肩透かし喰らっていたかも知れません(汗。

さあ、これだけ書いたのでつづきを読めます。
一時停止で別の本を読んでるのは辛かった。

書くの忘れてましたが、とっても面白かったです。
いざ、続きを読まん!


獣の奏者 (4)完結編
上橋 菜穂子
4062156334

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