『千年の黙 異本源氏物語』

千年の黙―異本源氏物語
森谷 明子
4488023789



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読了。


『源氏物語』を執筆中の紫式部が探偵役を務める、平安朝の雅な貴族社会を舞台にしたミステリ。
第十三回鮎川哲也賞受賞作。

『七姫幻想』が面白かったので同著者の本をまた借りてみました。

視点人物ははじめのうちは紫式部(作品上では藤原香子)につかえる女童あてきで、そのうちあちこちに飛びますが、最後まで式部は権力争いから身を隔て、おのれの創作に打ち込むひとりの女性として描かれています。頭のめぐりはいいのだけれど服選びのセンスがないとか、ものすごく不器用で紐ひとつ結べないとか、なかなか親近感のあるキャラクターでした。

タイトルから受けた重々しい感じは完全に裏切られ、雰囲気的には氷室冴子を読んでたような感じでするするっと読めました。
面白かったです。


第一部 上にさぶらう御猫(長保元年)
第二部 かかやく日の宮(寛弘二年)
第三部 雲隠(長和二年―寛仁四年)
附記

第十三回鮎川哲也賞選考経過
選評 笠井潔
選評 島田荘司




第一部は。帝の寵愛の深い猫の命婦が行方不明になったところから、あちこちで猫盗難事件が起きる謎を追いながら、子供から少女になりつつあるあてきの初恋が描かれていて、少女小説の読み心地。

第二部は、中宮彰子に献上した『源氏物語』からいつのまにか「かかやく日の宮」と題された一帖が行方不明になっていたことが判明し、それがいつどこからか、何故なのかを探るミステリ。

とくに私が印象深かったのは第二部です。
ここにはいったん作者の手を離れた創作物がどんな運命に晒されるかが描かれていて、創作者ならいろいろと感じることがあると思う。

とはいえ、源氏物語のみならず日本の古典に知識がそうがあるわけではないワタクシ。
ここで問題になっている「かかやく日の宮」散逸説なんてまったく欠片も存じませんでした。
そもそも、源氏の君と藤壺の初めの逢瀬のシーンが原作にはないということから知らなかったのでして、ええーっそうだったんだ! 状態だったので、この作品を隅々まで楽しめたとはいえないような気がするのでした。

つまり『源氏物語』を原本で読み通したことがないわけです。古文の授業でつまみ読んだだけで。
通して読んだことがあるのは大和和紀『あさきゆめみし』と橋本治『窯変源氏物語』だけだ。
そのどちらにもあのシーンはあったと思うのですが、もうその記憶も彼方なのでいまいち自信がありません。

あーでも、そうか。
それで藤壺の女御の生理周期とかが問題になるわけですな。日本文学的に。
日数が合わないということで。

まあ、そういう古典文学的な教養を持たない私でもけっこう楽しめたおはなしでした。(ミステリ的にとはいえないけど。ミステリ要素に関する教養度も古典とどっこいどっこいだ)

少女の日々に氷室冴子に親しんだ記憶のある方なら楽しいのではないかと思いますです。

ちなみに、すでに文庫化されています。
図書館では借りやすかったハードカバーを借りました。


千年の黙 異本源氏物語 (創元推理文庫)
4488482015

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