『さよならピアノソナタ』

さよならピアノソナタ (電撃文庫)
杉井 光
484024071X



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ボーイミーツガールの青春音楽小説。



機械いじりが好きな少年ナオは、粗大ゴミの不法投棄所を《心からの願いの百貨店》と名づけて秘密の場所にしていた。その日もひとりでひそかに掘り出し物を探しに訪れたナオは、そこでとてつもない音楽と出会った。うずたかく積み上がったゴミの山で鳴り響いていたのはオーケストラの音だったのだ。父親が音楽評論家をしているからナオは耳だけは肥えている。得も言われぬ響きに呆然としたが、そこにいたのは廃品のピアノを弾いている少女がひとりだけだった。ナオの存在に気づいた少女は敵意をむき出しにして威嚇する。不快なやりとりのなか何故か少女の壊れたカセットレコーダーを直してやったあとで、少女にここであったことは全部忘れろと命じられた。ナオは不愉快だったが、少女の顔に見覚えを感じることに疑問を覚えてもいた。




ああ、もうすこし若いときに出会えていたらよかったのに!
と感じる小説でした。

読みながらなんどもなんども、なんてこっぱずかしいの、若い、若い、青春だあ、と悲鳴をあげてました。

でも惹きつけられていく。とくに素晴らしいのは音の描写。言葉にするのがむずかしい様々な音楽のイメージを、クリアな輪郭をもって伝えてくれる、じかに肌に響いてくるようなのがすごい。

こんな感覚を味わうのは若木未生の『グラスハート』以来なんじゃないかと思います。
音楽の雰囲気を伝えてくれる文章はそれほど珍しくはないけれど、音そのものの存在感を感じさせてくれる文章にはあんまりお目にかかれないような気がする。音楽そのものを聞いてもその感触を曖昧にしか感じとれないひとでも、この文章を読んだら音楽を聴きたくなるんじゃないかと、そんな気持ちにさせてくれる文章でした。上手い!

だから冒頭に戻るわけです。
青春小説にこっぱずかしさを感じる自分が生まれないうちに読めればよかったのに。
そうしたらもっともっとこの世界にのめり込めたのに。もっと共感できたのに。

若人たちを「若いぜ」と客観的に見まもるような年齢になってしまった自分が、ちと寂しい読書でした。

でも音楽はいいよね。
聴くのもいいけど演奏するのもいいよね。
そして演奏するのはひとりよりも仲間とのほうがいいよね。

というわけで、バンド演奏のシーンの文章がまたすばらしくて、うっとりしてました。

だからワタシ的には音楽と関係ないシーンが邪魔でしょうがなかったです(苦笑。

クラシックとロックに関する蘊蓄がさりげなくいろいろあって、自分の知識の中途半端さにがっかりしつつも、この作者さんはほんとうに音楽に対する造詣が深いんだなあと感心しました。

青春と音楽。
いや、私としてはむしろ音楽と青春。

この話シリーズ化されていてつづきがあるのですが、いったいどうなっていくんだろう。
バンド活動ができるのでしょうか。

正直に言ってヒロインにはあんまり興味が持てなかったのですが、借りられたらつづきも読みたいと思います。


さよならピアノソナタ〈2〉 (電撃文庫)
4840241953

Comment

わーい

こんにちは、読んでいただけて嬉しいです!音楽が入ったよい小説としておすすめなので……。
二巻からの方が音楽的にも面白くなってくるのでおすすめです!ぜひとも。

こんにちは。

じつはおむらよしえさんのお薦め記事を見て読んでみました。
音楽の書き方がとてもいいですね。
二巻からのほうが面白いとは、ぜひとも読まねばなりません。
気合いをいれて予約待ちしたいと思います!

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