『双調 平家物語 1』

双調平家物語〈1〉序の巻 栄花の巻(1)
橋本 治
4124901216



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読了。

橋本治が『源氏物語』にひきつづき『平家物語』を語り直す、大長編の開幕編。
単行本のサブタイトルは「序の巻 栄花の巻I」。

この巻の内容は以下の目次をご覧下さい。


序の巻
 大序
 叛臣伝
 賊臣佞臣
 女禍
 安禄山
 楊氏権勢
 君寵
 愚衷
 対峙
 蕃将勇武
 潼関
 玄宗
 長恨歌
 腸
 父子寂寥
 諸行無常

栄花の巻 I
 大織冠
 御位談義
 入鹿暴虐




読み始めてうおーと思いました。

『窯変 源氏物語』のときにも注釈が全部本文に注ぎ込まれた文章に唸ったものですが、ここまでではなかった。

まさか、導入部にひかれている中国の歴史の丸ごと解説小説を読まされることになるとは思わなかったです。なんということでしょう。

ここでは中国における叛臣佞臣権臣の区別から、それらの実例、さらにその実態を懇切丁寧に語ってくれてる。そして本邦のひとびとがどれだけ中国の情勢についての誤解を重ねてきたかの分析まで加えてくれちゃってます。

とくに詳しいのは安禄山の変について。
安禄山の人となり。かれがどのように謀反に追い込まれていったか。安禄山は皇帝に背く気持ちはまるでなく、ただかれを眼の仇にする楊貴妃の縁者・楊国忠によるはかりごとに巻き込まれて抜け出せなくなったありさまが、楊国忠の皇帝の楊貴妃への寵を利用してのしあがる、たかることしか知らないならずものの出世と転落と共に描かれているあたり、圧巻でした。

国のためを思って働く賢臣、忠臣などどこを探しても存在しません。
官というものは一度システムが動きだしたら現状維持のためにしか働かないものだと、切って捨てております。

そうしてどうしても立ちゆかなくなった国というシステムは、革命という天子殺しによって解体される、というのです。

ひるがえって、日本は革命を一度も体験したことのない国です。
ここには、天皇というシステムに寄生し形骸化させ、あまつさえその上に君臨する佞臣つまり藤原氏ばかりが存在し、それがたいそう尊い一族であるかのように扱われてきた。
平家のしたことはその尊い一族の所業をなぞったばかり。

では、なぜそのような臣が世に尊ばれるようになったのか、の次第を、今度は藤原氏の前に権勢を誇った蘇我の一族の初めから説き起こして、それでこの巻は終わりです。

感想。
まるで歴史の勉強をしているみたい。

しかもこの歴史教科書は情の部分がかなりくどいのです。何度も何度も念押しするようにおんなじことがくり返される。
情景描写のなかにしずかに浮かびあがることばにされない感情、といったような文章が好きな私はちょっと辟易させられました。

しかも、この作品はどこまでも真面目で真摯なのです。

話の構造は『弱虫泣き虫諸葛孔明』と似たところがあると思うんだけど、あっちの突っ込みが斜めからのユーモアたっぷりなのに、こちらは真正面からのストレートばかりで息抜きがまるでできません。題材が違うから笑いのめせないんだと言えば確かにそうなんですけど、おんなじ所をぐるぐる回っているような気分になって、疲れました。

これは相当覚悟を決めて読まなければならない本ですねえ。

日本のお勉強をしよう、まずはフィクションからと思って選んだ本なので、その観点からいうならそのものズバリなんだけど、予想以上のお勉強本だったので逃げ腰になっているというところでしょうか(汗。

とりあえず、つづきに立ち向かうためにはエネルギーをためる必要がありそうです。

余談。

このシリーズはすでに文庫化されているのですが、図書館に文庫の蔵書がほとんどないので単行本で借りています。
リンクは文庫のを貼ろうと思ったのですが、なんかサブタイトルが違うので止めました。
文庫版はこちら↓。

双調 平家物語〈1〉序の巻 飛鳥の巻 (中公文庫)
4122051436

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