『ミストボーン 霧の落とし子 1 灰色の帝国』

ミストボーン―霧の落とし子〈1〉灰色の帝国 (ハヤカワ文庫FT)
Brandon Sanderson
4150204950



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読了。

独特の世界設定にスピード感あふれるストーリーが展開するクールな異世界ファンタジー、シリーズ開幕編。


火山灰が降りつづけ、夜は霧に覆われる、身分格差の厳しい世界。支配王を神と崇める〈終の帝国〉において、スカーと呼ばれる奴隷階級は貴族たちの横暴にうちひしがれ、無気力に陥っていた。ヴィンはスカーの孤児で、とある盗賊団の一員として頭目の虐待を受けながら暮らしていた。ある日、頭目キャモンが〈鋼の聖職省〉の義務官を詐欺にかけようとしたとき、ヴィンは自分でひそかに“幸運”と名づけている力をつかった。義務官はいっけん上手く騙されてくれたようだったが、その場に居合わせた男たちがヴィンを追いかけてきた。かれらは〈鋼の聖職省〉の追っ手からヴィンたちを救ってくれ、同時にヴィンをキャモンから救い出してくれた。男たちの頭目はケルシャー。帝国内で最も悪名高い盗賊の首領であり、複数の合金術をつかいこなす〈霧の落とし子〉だという。そしてかれは、ヴィンが“幸運”と読んでいたものが合金術であることを告げる。




これはとても面白い設定のお話です。

終末期に入った世界という暗い雰囲気の舞台。金属を体内で燃焼させて得た力をふるう合金術。合金の種類によって使える力は異なり、たいていの合金術者はひとつの合金しか使えず〈霧の使い〉と呼ばれる。

そこに存在する、それぞれに性質の異なる〈霧の使い〉たちが得意分野でそれぞれにスペシャリストの働きをする盗賊団。

集団を率いるのは、存在からまれなすべての合金を使うことができる〈霧の落とし子〉であり、一度帝国に捕らえられたが牢獄から逃亡したという伝説のもちぬし〈ハッシンの生き残り〉。特異なカリスマ性を備えた男ケルシャー。

そのケルシャーによって〈霧の落とし子〉であることを見いだされた少女ヴィンが、「帝国をひっくり返す」仕事に盗賊団の一員として参加することになる――というのが、この巻の大筋。

訳者あとがきによると作者は『オーシャンズ11』みたいな話を書きたかったんだそうで、なるほどと思いました。抑圧感漂う世界で権力者相手に一矢を報いる悪漢たちの話、みたいなコンセプトかな?

設定が独特なので物語世界の仕組みやらなんやらを呑みこむのに多少時間がかかりますが、ストーリーは読み手のとまどいをよそにぐんぐんと進んでいきます。異世界ファンタジーとしてはかなり能動的な部類に入るんじゃないでしょうか。

キャラクターも把握するのにちょっと手間取りますがなかなか個性的、なんだかラノベを読んでいるときと気分が似ている。普段読んでいるファンタジーと比べると、キャラクターと読み手にすこし距離があるんですね。

でも、このスピード感はその距離のおかげで出せているものだと思う。
主人公はいちおうヴィンなのかなと思うのですが、彼女視点べったりというわけでもなく、ケルシャーが中央にいるときにもケルシャー視点というわけではなく、人物をすこし上から外から眺めて
いる感じ。

で、私にとってなにより面白かったのは、合金術とその周辺の設定です。
これは読んで把握していくことに歓びがあると思うのでくわしいことは書きませんが、こういう魔法があったか、と思いました。新鮮な驚き。

正義感とは距離を置いた動機で革命を起こそうとする盗賊の精鋭たちと、巨大で謎めいた存在感で君臨する支配王。

ピカレスクロマンというか冒険物というか、コンゲームの要素もありそうな感じで。

騙し騙され、利用し利用され、何度も間一髪で死線をくぐりぬけていくような、そんなスリリングな展開が待っていそうで、とてもわくわくします。

支配王への復讐を誓うケルシャーですが、ときに現れる失った恋人への複雑な思いに興味津々。
男ばかりの集団の話の場合、女って裏切りの象徴みたいなものだしなーとか、妄想が膨らみます。フフフ。

つづきはすでに既刊です。
私も早く読みたい!
というわけで予約しました。


ミストボーン―霧の落とし子〈2〉赤き血の太陽 (ハヤカワ文庫FT)
Brandon Sanderson
4150204993

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