『深山に棲む声』

深山に棲む声
森谷 明子
4575236551



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読了。

いついずことも知れない場所にある聖域・深山にかかわる噂をものがたりとして描く、ファンタジー風味のミステリ連作短篇集。

目次は以下の通りです。


朱の鏡
黒の櫛
青の衣
白の針
囲炉裏の前で
黄金長者




同著者の『七姫幻想』とよく似た構成の話でした。

似ているのはひとつのことに関わる、異なる時系列の話を異なる視点でつづる短編であること。
登場人物の重複やかれらの年齢をつなぎあわせると見えてくる、全体的な流れを推測しながら読むのが面白いお話です。

聖域という名の異界としての深山と、それに関わることを忌避する離れ里のものたちの、閉じた世界の物語という構造も似ていると思う。

違うのは、短編が時系列順に並んでいないこと。
話のなかでも時々後戻りしたり、未来に飛んだりするのでかなり混乱する。

それと、場所と時代が特定できないこと。
冒頭に載っている全体に関わるであろうテーマを提示するお伽噺が、ロシアのバーバヤガのものがたりの断片なのでまず混乱。

固有名詞は古風な和風なのにカタカナ表記なのでまた混乱。

都の天子の話や武士たちの争いなどの風聞と、登場する小物による時代推測がかみ合わないことでまた混乱。

そんなふうに作中にいろいろと仕掛けられた罠に見事にハマって、最後まで翻弄されてしまいました。

推理することがたくさんありすぎて、作品全体を味わうところに至るまでにけっこう苦労してしまった(汗。

この話は噂話が伝説となり物語となるまでの変遷とその要因と過程を、人為的なものから自然発生的なものまであらわして見せてくれたような気がします。

個人的に邪推をすると、この話はもともと『七姫幻想』とおんなじシリーズだったんじゃないかなーと思う。そのなかで場所と時代を特定しても差し支えない物、むしろ特定したほうがいい物を『七姫』に分けてまとめ、特定しないほうがいい物をこちらにまとめたんじゃないかな。完全なる当てずっぽうなのですが、そんなことを考えてしまうくらい似た味わいがありました。

面白いのは『七姫』の終わりがどことなく開けているのに、こちらはしっかりと閉じているところですね。
時代的にそれほどたくさん世代がまたがっていないせいか、それとも物語世界が箱庭だからなのか。

いずれにしろ、すべてが緻密に構成されていることに感嘆いたしました。
面白かったです。
疲れたけど(苦笑。

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