『グラスハート』

グラスハート (コバルト文庫)
若木 未生 橋本 みつる
4086118092



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読了。

音楽に魅了され音楽によって自己を表現することに憑かれた若者たちの、現実と夢の狭間でもがく姿をみずみずしく描く、青春音楽小説。シリーズ開幕編。



西条朱音は高校二年生。音楽教師と音楽リポーターの両親を持ち、幼い頃から音楽に浸って育ってきた。しかし、その日朱音はプロ志向のバンドから女だという理由でキーボーディストをクビにされた。怒りと情けなさに震える心で信号待ちをしていたとき、ふと目の前に憧れのギタリスト高岡尚のすがたを発見する。人気バンドZ-アウトのサポートメンバーである尚は、朱音とほぼおなじ年齢の眼鏡をかけた少年と一緒だった。話しかけることもできずにかれらはいなくなってしまったが、その夜、朱音の家に奇妙な電話がかかってくる。最終的に坂本と名乗った相手の用件は、朱音に自分たちのバンドでドラムを叩いてくれないか、ということだった。




再読です。
この本が出たのは1994年のことなので、1994年に読んで以来の再読なわけです。
このたび、めでたく完結編が刊行され、それをめでたくゲットしたので、おさらいのために読み返すことにしました。

読み返してみて、やっぱりあらかたは忘れ去っていたのですが、それでもけっこう覚えているところもあり、や、さすがに大好きだと思った作品は違うね、などと感慨を覚えたりしました。

しかし、一六年の歳月は長かった。
登場人物がみんなすごく年下に感じられる! 初読の時だってみんな年下だったんだけど、さらに距離が開いて、なんか若々しいなあ、かわいいなあ、頑張れよ、みたいな感覚で読んでいる。

あの藤谷先生に対してすら、けなげに思う自分がいるよ。どひゃー(汗。

先日読んだ『さよならピアノソナタ』でこの作品の存在を思い出したのですが、あちらは立派なライトノベルでした。

でも、こちらはラノベとはいえない。これは青春小説です。登場人物が記号じゃないもの。生き生きとしてる、でこぼこしてる、枠に収まりきらない部分があって、ひとことでは言いきれない。複雑な感情を整理しようとはしていない、徹頭徹尾理屈で書いてない。と思う。

そうだった、昔はコバルトは青春小説のレーベルだったんだ。

でも最近のコバルト文庫にはこういうのは無くなった気がします。ラノベ化しているのかな。読み手が楽をしたがるようになっちゃったのかな。

それは置いておくとして、グラスハートです。

初読の時は音楽にばかり気をとられていましたが、じつは実際に音楽しているシーンはそれほどないんですね。
なのにすごく音楽を感じるのは、音楽を愛している人間、音楽の周囲にいる人間たちの生態がなまなましく描かれているからだと思われます。

曲作りを始めると現実が見えなくなってしまう天才・ロック界のアマデウスこと藤谷先生をかしらに、天才的なテクニックで傍若無人に突き進むキーボーディスト坂本君、冷静そうにみせていながらじつは激情一直線なギタリスト高岡尚、かれらのつくりだす熱い音にのぼせそうになりながらも必死でついていく朱音ちゃん。

物語では音楽をとりまく商業的なものだったり人間関係だったりのシビアな環境を織り交ぜつつ、朱音ちゃんのいる場所がどんどん変化していく状況が描かれています。

目の前の音楽が素敵だと思って手を伸ばしたら、いつのまにか周りの景色が変化していた、みたいな感じで。

でも、この話、朱音ちゃん視点で朱音ちゃんの変化を書いているようで、じつは朱音ちゃんの見た藤谷先生の生と死の物語なんじゃないかとか、今回感じてしまいました。生と死なんて書くと大げさだけど、音楽家としての、とつけたらいいのかな。

この話の背景には藤谷先生の過去のしがらみや現在の微妙な立ち位置などがあって、それを打開したい藤谷先生の望みがある。それがどうやらストーリーを動かしている原動力みたいだと、いまさらながらに気がついたんですよ。いまさらながらに。

なんて鈍いんでしょうか私。
つねに地べたを這ってる視点で読むのをやめなさい、と過去に戻って蹴りを入れたい感じです。

でも今は気がついたからすこしは成長したのかもしれませんよね。
だからかれらが若くあやうく見えるんだな、きっと……そうにちがいない。真崎君なんてかわいい~って感じだもの(汗。
ああ、私ももう若くないんだな……と感慨に耽ってしまいました>けっきょくどちらがいいのか、私!

でもね、以前読んだときにドキドキした感覚は失われず、きちんとドキドキがよみがえって読めたのが嬉しかったです。ちょっと時代を感じるところもあったけど、携帯電話が出てこないとか、ポータブルプレイヤーの種類とか、でもそれ以外はぜんぜん古くない。

この巻は、「伝説の藤谷直季」バンドが衝撃的にお披露目されたところで終わっています。
ドキドキワクワク最高潮ですね。

さあ、感想書いたからつづきに行きます。

余談。
朱音ちゃん母のモモコさんって、『さよならピアノソナタ』の主人公父と立場が似ているよね。
……いやそれだけなんですが。

グラスハート〈2〉薔薇とダイナマイト (コバルト文庫)
若木 未生 橋本 みつる
4086118564

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