『芙蓉千里』

芙蓉千里
須賀 しのぶ
4048739654



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いただいて読了。


明治末期、大陸に生まれた混沌の街哈爾濱(ハルビン)の女郎屋を舞台に、少女のひたすらな生を描く、「ガールズ大河小説」。



フミは十二歳。辻芸人の父親とともに角兵衛獅子を舞って各地をめぐり暮らしてきたが、父親は女とともに行方をくらましてしまった。ひとりになったフミは人買いに自分を売り込んだすえ、海を渡り、哈爾濱の中国人街にあって日本人が経営する女郎屋・酔芙蓉に連れていかれる。フミの容姿を見た酔芙蓉の女将・芳子は難色を示すが、自分の母は吉原のお職で自分も大陸一のお女郎をめざしているといいはると、なんとか下働きの赤前垂れとして置いてくれることになった。酔芙蓉は日本人女郎が売りの店だ。なかには厳正な階級制の女郎たちの濃密な世界がこもっていた。フミとともに売られてきた新潟の貧農の娘タエは、女郎になる運命のときに怯えて泣き暮らしていた。そんなタエを気の毒に思ったフミは、タエに芸妓になれば無理に客を取らなくてもいいと吹き込み、自分の舞の技術を教え始めた。




コバルト文庫という少女小説レーベルで活躍されていた作者さんの、一般小説ということで読みました。初の、ではないようですが、私がコバルト以外で読むのは初めてです。

読み終えて、須賀さんはやはり須賀さんだった、と思いました。
もともとスケールの大きい、前向きでさばけた作品を書く方だったのでそれほど心配はしていなかったんですが、一般向けに作風を変えたということはなく、ぐいぐいひきこまれるストーリーテリングも、熱い思いも、非情な現実に立ち向かう前向きな精神も、なにも変わりません。
ただ少女向けとして自重していたところが解放されて、書ける幅が広がったという感じ。

どういう風にひろがったかというと、とにかく、あけすけ(苦笑。
もともと後宮だのなんだのの話も書いてらしたけど、ここまで具体的かつ赤裸々なディテールはなかった。女郎屋での生活って、女郎の一日って、こんなんだったのねえ、なるほどーとかなりお勉強させていただきました。

たしかにこれは重労働だわ……。
しかし、女郎屋の下働きである赤前垂れの生活もそうとう酷い。毎日洗濯が必要なのはわかるけど、洗濯機なんて無いんだからぜんぶ手で洗うんですよね。真冬のハルビンで。もちろん脱水機もないから手で絞るんだろう。しかもすべてシーツやらなんやらの大物ばかり。これ、一日で全部乾くのだろうかとかなり心配になりました。毎日晴れてるってわけでもないだろうしと。

というわけで、女郎屋の実態にかるくショックをうけたわけですが、あとはいつもの須賀節が炸裂。

どんな状況でもめげない、折れない、何かをつかみ取るヒロインが、数奇な運命と様々な出会いによって成長していく様が、からりとした爽やかな筆致で……逆にいえば全然しめっぽくなく描かれています。

からりとしすぎて色気がないのもいつも通りでしたが(苦笑、フミちゃんは「流血女神伝」のカリエちゃんよりは恋する乙女だったと思います。

どうしてもフミちゃんをカリエちゃんと重ねて読んでしまいましたが、恋愛に関してはかなり頑張っていましたと思う。
そういうわけなのでフミちゃんに相対する二人の男の原型とかもいろいろと推測したりしてしまいまして、こちらはまあ、あんまり書くと興を削ぐだろうから言明しないけど、黒谷さんは某皇女の弟さんとかおもいうかべて読んでたり。←書いてるし。

ごちゃごちゃ書きましたが、ようするにとっても面白かったです。
フミちゃんの舞がもうすこし目に浮かべられたらもっとよかったと思うけど、これで内容はぎゅうぎゅう濃縮されてるので無い物ねだり、でしょうね。

女郎屋の人間関係、とくに姉さんたちの存在感がそれぞれすごくて、哀しくて、フミちゃんだけじゃないほかの人たちもちゃんと生きているんだよ、というところが描かれているところがとてもよかったと思います。


ところで、この記事を書くのにアマゾンをみたら、作者さんのインタビュー動画が載ってました。
須賀さん、かなり美人さんでびっくりw
タイトルの由来などを語っておいでです。

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