『神々の夢は迷宮』

神々の夢は迷宮 (講談社X文庫―ホワイトハート)
西東 行 睦月 ムンク
406286617X


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読了。


天涯孤独になった海人の少年と有能だが人から孤立しがちな若者のぎこちない出会いを、神々の至宝を収めたという迷宮の謎とともに描く、異世界ファンタジー。



海の上で生涯を送る海人の一族に生まれ育ったワツレンは、大嵐で一族の全てを失った。かれを漂流の身から救ってくれた大国フィリグラーナの海軍将校ルーザ=ルーザは、ワツレンを養子にし、王都ディアマンティーナの友人にその身を預けた。ルーザ=ルーザの友人は神々の至宝を守る迷宮の管理庁で若くして管理者に任ぜられたエトだ。ワツレンはエトの助手として迷宮管理庁で寝起きすることになった。成人するために必要な刺青を刻み終えないまま、海人としての未来が無くなったワツレンは、陸地での生活に馴染もうと努力するが、親切に接してくれるエトにどうしてもうち解けさせてくれない一線を感じていた。




同著者の『鳥は星形の庭におりる』が面白かったので読みました。
こちらもたいそう面白かったです。
精緻な構成に過不足無く描かれた世界設定。登場キャラクターのさりげない存在感。素直に物語全体をひとつの作品として楽しめる逸品だと思う。

前作でもそうでしたが、作者さんはとても理知的な考え方をされるかたなんだなー。
今回のメインの舞台である迷宮は、魔法は魔法でも数学的な理屈っぽい魔法がかけられています。
ファンタジーの幻想は輪郭の曖昧な、説明のつかないものであることが多いのに、この作品の場合は曖昧なものをひとつの理屈によってすっきりと説明してしまう数学の力が不思議な力を持つものとして扱われているのですね。

たしかに数学はわからない者にはとても不思議で神秘的なものです。わからない私が言うのだから間違いありません(笑。
それでもって、そのわからない数学をすらすらと解き明かしてしまう人は、魔法使いとおなじくらい底の知れない、謎の人に見えるかもしれません。
このひとの頭の中はいったいどうなっているんだ~という感じでしょうか。

というわけで、作中にぽこぽこ出てくる数学用語が魔法の呪文のように感じられた私……。
もはや中学レベルの数学も理解できないような気がしてボーゼンとしました。

が、話は数学を理解できなくてもちゃんと理解できます。
メインテーマは、否応なく襲いかかってきた哀しみ苦しみとどう向かい合い、折り合いをつけていくか。そして、人間はひとりじゃないんだよ、ということかなーと思います。

作品世界は『鳥は星形の庭におりる』とおなじで、蒼い衣の吟遊詩人氏がちょい役(でもかなり重要な役)で登場しています。
私にとっての吟遊詩人は物語の枠に近い部分にいる存在そのものが憧れで、この作品でもその憧れを体現するような人物像で描かれているのでそのあたりがとても好きです。

それから、美形の平民出身将校ルーザ=ルーザくんの人を食ったような名前にウケました。
名前を見るだけで漫才コンビが出てきたような気分になる美形キャラって、珍しいと思う……。
本人はいたって爽やかなお兄さんなんですがねー(苦笑。


鳥は星形の庭におりる (講談社X文庫―ホワイトハート)
西東 行 睦月 ムンク
4062865874

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