『風の王国 うつつの夢』

風の王国―うつつの夢 (コバルト文庫)
毛利 志生子 増田 メグミ
4086012944



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読了。

吐蕃王に嫁いだ唐の公主の人生と吐蕃をめぐる国家の動乱を描く、歴史小説。シリーズ十九冊目。



吐蕃王ソンツェン・ガムポの命で隣国シャンシュンに赴いた翠蘭を待ち受けていたのは、王国末期の混乱状態だった。いくつもの異なる陣営の勢力争いに盲状態のままに巻き込まれた翠蘭たちは、反逆者に追われる国王リク・ミギャ達と合流し、逃避行の果てに王太后の陣取るガカリダの砦へと向かう。そのころ、シャンシュン南部の小領主ドンモ・オルパは、シャンシュン攻略のため大軍を率いた吐蕃宰相ガルの訪問を受けていた。




ふーっ。
息もつかせぬ怒濤の展開でした。
ゆっくり読もうと努力していたのにもかかわらず、まったく報われず。つぎつぎと現れる新局面にハラハラドキドキしながら、二日で読んでしまいました。

物語はもうすっかり歴史動乱物の様相です。
歪み腐れたシャンシュンの内部状況と吐蕃の侵攻がからみあうこの巻で、ソンツェン・ガムポの深謀遠慮とリク・ミギャの行ってきた消極的ながらとても有効だった策がどれほどこの状況に作用してきたかがあきらかになるくだりには、息を呑みました。

戦によって生み出される悲惨な状況に痛ましさを覚えつつ、無能な為政者の生み出す死者の数には憤りを感じずにはいられません。

私利私欲のみを追求する者が権力を握るとどうなるか。その最悪の例がここに提示されているように思えました。

その状況を作り出した王太后の捻れた思いは、政略結婚の生みだした物。
彼女のした行為は責められてしかるべきですが、その根底にあった心情に翠蘭は自分を重ね見てしまいます。もしかしたら、王太后の立場は自分の立場だったかもしれないと。

複雑な人間関係と政治情勢を緊密にからませて、さらに戦の悲惨さを描き出す。
様々な要素がぎゅうぎゅうに詰め込まれた濃密な物語でした。

読みおえたらしばらく放心状態になりました。

とても面白かった。
あえて注文をつけるとすると、あまりにも内容が詰め込まれているので余韻に浸るシーンがないってことでしょうか。
情景描写がほとんど存在しない。
シャンシュンの空気を風を感じるようなシーンがもう少しあると嬉しかったのになと個人的には思います。

そんな緊迫つづきの話で、ほっとできるのは犬のヤブリムの登場シーン。
翠蘭がヤブリムに腹を踏まれるところは楽しかったです。肉球のついた足という文章だけでにやっとできましたw

ところで、このあとシリーズは刊行されていない模様ですが、もしかして打ち切りになってしまったのでしょうか。
ラブが全然無い殺伐歴史ものになってしまったから心配していたのですが、とても面白いのでぜひつづきも読みたいです。

翠蘭が子どもたちと離ればなれのままなんて可哀想すぎるし、ガルがとっても頼もしくなってきたのでw

しかし翠蘭ってほんとうに丈夫な人だと思います。こんなに掠われまくって逃げだしまくって、強行軍つづきで、熱出して寝込んでたりしてたのに、最後のチャンバラシーンに参加している姿にはちょっと呆れました。

翠蘭がスーパーウーマン過ぎるのがこのシリーズの唯一、現実離れしている点だと思いますw

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