『はなしっぱなし 上下』

はなしっぱなし 上 (九龍COMICS)
五十嵐 大介
4309728405



いただいて読了。

『海獣の子供』『魔女』の五十嵐大介の初期短篇集です。
森羅万象のすべてを感じて生きている、まるで古代人のような感性が強く繊細な画力によって表現された、すごい作品群でした。

ジャンル的には奇妙な小話系の幻想譚になるのか。
しかし、この作品群は根っこから葉の先までずぶずぶとファンタジーだなと私には思えます。

ファンタジーって世界を丸ごと感じて表現するジャンルでもあると思う。
そのなかにはむろん人間も含まれているわけで、その生と死も世界の一部であるわけで。
ひとがひととして生きて思考する限り、世界の中に自分の存在意義を見いだそうとすれば、みずからの生と死を思わないわけにはいかないものだと思うのです。

だから人が世界を感じて思うことには、生と死にかかわる物事が必然的に含まれるものなのではないか。

否応なしに世界と直面していた古代の人々はつねに森羅万象におのれの行く末を重ね見た。
それが神々の存在をうみ、神話を育てていった。

このマンガには、その神話の原点、世界と対面した時に人が感じる純粋な思いが表現されているように思うのです。

現在から見るとまだ絵柄としては完成されていないけれど、話を紡ぐための画面構成力は初めから図抜けています。
前半はまだ線に迷いや弱さがありますが、あるときから突然きっぱりとした力強さがあらわれて、世界がさらに鮮明になる。

そして最後にはすっかり五十嵐大介の世界ができあがっています。

個々の作品に関してあれこれとは書きませんが、日常にふつうに転がっている風景にこれだけの夢幻を見ることができる視力に圧倒されました。

現代に生きる人間である私たちはこうした感性をほとんど失っているのだなと思うと、寂しいです。

はなしっぱなし (下) (九竜コミックス)
五十嵐 大介
4309728413

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