『ラピスラズリ』

ラピスラズリ
山尾 悠子
4336045224


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読了。

独特な文章で夢の中へとひきこんでゆく、絵画のような幻想小説。連作中短篇集。

幻想短篇集を読みたい、夢を見ているような気分の、と呟いた時にお薦めされて、そういえば! と思い出して借りました。

予想と期待に違わない、ディープな幻想小説でした。

収録作品は以下の通り。


銅版
閑日
竈の秋
トビアス
青金石




文章がとにかく独特。息継ぎ少なく、淡々としたリズムを刻んでゆきながら、世界を漂っていくような感じなんです。

シーンごとに視点人物は一応いるのですが、その人物の中にいながらその中に視点が留まらない。
視点人物というより、基点人物といったほうがいいような。
人物と物語世界の溶け合うその狭間に埋没しかけながら、起きる出来事を感情ぬきで克明に描き出していくような。

まるで、夢の中に迷い込んでいくような、不思議な感覚に陥ってしまう文章なのです。

その文章があつかうのが、いずことも知れない場所にある大きな館に住まう謎の冬眠者の物語。

はっきりとした説明がないままに読み手のつれてゆかれる謎めいて不思議な世界で起きる事件は、やはりはっきりとした輪郭を持たないまま、基点人物の受けとめたバラバラのシーンとして提示され、全体像がなかなかあきらかになりません。

不思議な世界に耽り、謎に思いを巡らし、ときに混乱しつつ、夢見る気分にひたる。


これはそうして楽しむ、まさしく言葉によって紡ぎだされた夢なんだなーと、うっとりしながら読みました。

いろんな謎が解けないままに残った初読。
読み返してあらたな発見をする再読。
あとはひたすら言葉に酔いしれてこの世界にどっぷりとつかり、楽しみたい。

そんなことを思ってしまった、究極の幻想小説です。
キャラクター小説や波瀾万丈の大河小説などをお求めの方にはお薦めできない、読み手を選ぶ本だと思いますが、私は大好きです。

だいたい、ふつうの本は一回読んだらもう気が済むのです。
読み返すだけで異例中の異例。
一度に三度もなんて、ありえない(笑。


山尾悠子作品集成
433604256X


歪み真珠
山尾 悠子
433605021X

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