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『イデアマスター GLASS HEART』

イデアマスター―GLASS HEART (バーズノベルス)
若木 未生 藤田 貴美
4344815750



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読了。

青春バンド小説「グラスハート」の完結編。

集英社コバルト文庫ではじめられたシリーズですが、長きにわたった中断の後、出版社を移籍して完結編が発表されました。

まさか読めるなんて思わなかったので、刊行されただけで感動した。

最後なので目次を写してみたり。


海と黄金[introduction]
コゴエ ノ イロ
イデアマスター I[the overture]
イデアマスター II[the passion]
イデアマスター III[the variation]
ラッシュ
海と黄金[music remained]

あとがき




時系列的にもきちんと『熱の城』からの連続した続編です。
天才アーティスト藤谷直季率いるテン・ブランクの、現在進行形の変化と激動がこの一冊にまとめられてます。

大学生になった朱音ちゃんは、藤谷先生と坂本君の間で板挟みになった苦しみを藤谷先生への怒りで表してて。
そのあいだにテン・ブランクの音楽性はさらに先鋭的になっていくのですが、思わぬ落とし穴が待ち受けていて。
皆が不安に思っていたそのことが、とんでもないところで表面化してしまって。
テン・ブランクが壊れかけたその時に、藤谷先生には魔の誘惑のような逃げ場所が出現したりして。

これってかなりぎゅうぎゅうに凝縮した展開だったかもしれない。

時は止められない、変化しない人間はいない、だから人と人との間柄もおなじままではいられない。

どれほど居心地のよい場所でも、まったくおなじ状態で維持することはできない。
変化してしまった関係を終わらせることはできる。それもひとつの方法。

でも、おなじ痛みを感じるならば、努力して関係をつづけてみてもいいんじゃないか。
変化した人間同士で、ふたたび関係を築いてもいいんじゃないか。
その結果、あらたに得られる何かもあるかもしれないよ。

いつでもやり直しはできる。
でもやり直すためには相手に寄りかからずに自分の足で立ち、自分の意志で行動しなさいね。

てなことを感じた一冊でした。


シリーズを通していえば、これはやはり藤谷直季の回復の物語だったなと思います。
とうとう藤谷先生視点の話がでてきて、そこには藤谷先生自身の語る、グラスハート初めての回想シーンがありまして、そうだったのかと思いつつ、やっぱりねと感じた。

そして、さらに出現した櫻井ユキノ視点の話は決定的でした。

櫻井ユキノは、藤谷先生の分身。
他人を拒み、自分の殻に引きこもって、自分だけで楽になりたい心の表れ。
そして、テン・ブランクは、藤谷先生が他人を受け入れて広い世界に自分も受け入れてもらいたいという心の表れであり、決死の試みだったんじゃないか。

そして試みが挫折しかけて孤独に戻りかけたときに、あなたはひとりじゃないよ、ひとりで頑張らなくてもいいんだよといってあげられる存在を、かれがみつけられるかどうか。まわりがそのことをわからせられるかどうか。

それがこの話の最大のテーマだったんだなと思った。

わけですが。

個人的に残念だったのは、その大切な部分が朱音ちゃん視点じゃなく、藤谷直季・櫻井ユキノバージョンで表現されてしまったことでした。

この部分のおかげでこの話はとてもわかりやすくなってコンパクトになったけど、この部分が私にはとても説明的かつ解説的に読めてしまって、話に距離を感じてしまった。

これまで愚直なまでに直接話法で感情的だった文章がほのめかしていた話の骨格の部分を、突然むきだしにされてしまったような気分だったのですね。

でも、朱音ちゃん視点で押しきったらこの話は完結しないかもしれないとも思うので、致し方ないのかな。無い物ねだりなのかな。

完結した、話も前向きに終わった。期待もそれほど外れなかった。
というところで満足するべきなんだろう。
ええ、そのことではたいへんに感謝しています。

うん、完結させるってとっても大切なことですよね。
……若干身にしみる結論でした(汗。


悩む朱音ちゃんには案の定、真崎桐哉がちょっかいかけてきましたねw
桐哉じつはすごく優しい奴だったんだな。
今回の出番はすくないけれど、今回の読み返しで彼の株はワタシ的にノンストップ高となりました。
あれだけテン・ブランクのこと嫌っていたのに、つづけられるならつづけろよと言うかれの変化にうるっとしてしまった。不覚(苦笑。


またしても余談。

藤谷先生の一人称は、ぜんぜん読みにくくなかったです。
むしろ、高岡尚のほうがわかりにくかったと思う。

なぜかと考えたのですが、人間って知らない・わからない物事に関しては説明をつけようと思ったり、一生懸命見たりするので、他人のことがなかなか理解できない藤谷先生や坂本君は周囲を懸命に観察しているのではないかと思いつきました。

朱音ちゃんは社会経験値がすくないので始めのうちはいろいろ説明してくれてましたが、だんだん知ってることが多くなってそれをしなくなってしまったのではないか。

そして、高岡君は社会経験値が高いので、そんなん自明の理だろってことで目新しいことがないぶん説明する必要性を感じてくれなかったのかなーと。

そんなことをわざわざ考えてる私って、どういうヤツなんだろ(汗。

ということでこの話は完結しました。

ノベルスで再刊行がスタートしていて、そのあらたに出るバージョンには書き下ろしの短編が収録される模様ですが、私が読むことはないと思います。

でもこのシリーズは確実に私の読書暦に残るピュアなシリーズだったと思います。

GLASS HEART 「グラスハート」 (バーズノベルス)
若木 未生 藤田 貴美
4344819063

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