『蛍の行方 お鳥見女房』

蛍の行方―お鳥見女房 (新潮文庫)
諸田 玲子
4101194254


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読了。


江戸時代、将軍の鷹狩りのためのお役目・御鳥見役を代々受け継ぐ御家人の一家の日常を、母親・珠世の視点でたおやかに描く、ゆたかな四季とひとびとの営みの印象的な連作。シリーズ第二作。

貧乏御家人の家に転がり込んできた居候たちと、かれらをやさしく穏やかに受けとめる珠世さんと矢島家のひとびと、そしてかれらの住まう雑司ヶ谷の自然。

なにげない光景にひそんだささいなきっかけからはじまる出来事は、この時代においては不穏ではあっても日常の範囲内。けれどどれだけ日常であっても胸を波立たせずにはおかず、さまざまに不安をかきたてるさまが繊細に描かれて、とてもせつなく哀しいことになることも。

だからこそ、穏やかな日々のいとおしさが心に迫ります。

前巻で、御鳥見役の裏任務に旅立っていった夫の身を案じつつ、珠世さんの日々は不安を抱えたままですが、彼女はつとめておだやかににこやかにふるまいます。

どの話も季節感たっぷり。
当時の風物や行事をおりまぜつつの、短篇集です。
矢島家の人々の平穏にすぎていくようで変化の絶えないありさまに、まるで近所に住む一家を見守っているような気持ちになりました。

珠世さんを中心に、引退した父親から、年頃の男女、居候の幼い子どもたちまでの老若男女さまざまな喜怒哀楽に、ゆたかなお話だなーと感じました。

けして楽しいばかりではない、貧富の差だったり、上下関係があったり、身分差別があったりといろいろあるのですが、みんな懸命に自分の生を生きている。いまこのときをせいいっぱい感じている。

そんな様々な要素を含むお話をひとつにまとめあげる存在が、えくぼの珠世さんなんだなとしみじみと理解いたしました。

珠世さんの夫・伴之介さんのエピソードが落着して、ほっとしたところでこの巻は終わりです。

でも、まだ話にはいろいろと伏線がはられている模様。
つづきも借りようと思いますw

鷹姫さま―お鳥見女房 (新潮文庫)
諸田 玲子
4101194262

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