『暗黒神のくちづけ 処女戦士ジレル』

暗黒神のくちづけ (ハヤカワ文庫 SF 139 処女戦士ジレル)
C.L.ムーア 仁賀 克雄
4150101396


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読了。


十四世紀フランス西部の架空の小国、ジョイリーの女領主ジレルの異界への彷徨を描く、中短編集。

アメリカのSF作家C.L.ムーアが1930年代に書いた暗い色調の幻想譚。再読です。
先日、時間SF短篇集で久しぶりにムーアの作品を読んで急に読み返したくなりました。

収録作品は以下の通り。


暗黒神のくちづけ
暗黒神の幻影
魔法の国
暗黒の国
ヘルズガルド城(団精二訳)

訳者あとがき



長身のうえにしなやかかつすこやかな肉体を持ち、烈火のような気性をそなえた女戦士ジレル。
苦難に挑戦するかのごとく敢然と運命に向かって突き進んだ末にたどりつく、地下や異界での旅路とそこで出会う驚異がメインのストーリー。

ヒロインが強烈なわりに物語は受動的で、わけのわからない異界の法則に流されたあげくになんとか危機を乗り越えるという感じの話が多いです。

ここで描かれる異界は「魔法の国」をのぞいてすべて死の国ですね。
死臭のただよう陰鬱な世界。

延々とつづく異様な世界の描写は不可解であり不快でもあります。
十字架を持っていては入っていけないということは、そこはキリスト教徒の正しい世界ではありえない。

訳者あとがきにもあるようにこれは地獄のみちゆきであるなあと、いまさらに気づきました。
初読の時には異世界の異様さにのまれてそれどころじゃなかったんです。

この異界のありようは悪夢のようです。
というか、たぶん悪夢なんでしょう。

とらえどころのない心理的な抑圧感のつづく文章で描き出されるこの作品は、読み手をかなり選ぶもののように思われます。

好きで読んでる私にしてから、一編につき二、三回は途中で眠ってしまったという、そういう雰囲気の話なわけです。

夢幻の荒野を夢遊病者のごとくさまよい歩くような読書をしたい時に最適だと思いました。
まさにそういうのをのぞんでいた私は、思う存分堪能いたしました。

ところで、このサブタイトルは今みてもやっぱりどうかと思いますねえ(苦笑。
たしかに嘘ではないんですが、タイトルから想像するようなエロスはあんまりというかほとんどないんですよね。

恋愛らしきものもあるにはあるけど、究極のツンデレによって「なんということでしょう」になっちゃいますしねえ。

……すでに絶版ですが、書かれた年代的にしかたないことながら差別的な表現がわずかに見うけられるため、再版は難しいかもしれないなと、読みながら感じました。

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