『世界画廊の住人 地下迷宮の物語』

世界画廊の住人―地下迷宮の物語 (幻狼ファンタジアノベルス)
栗原 ちひろ 石据 カチル
4344818407


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いただいて読了。


みずからの存在意義に苦悩する青年と、かれを利用する騒がせ屋と名乗る男とのかかわりあいを、理知的かつシニカルに描く、画に描かれた世界をめぐる物語の第二弾。



元錬金術師で、悪しき言葉による世界の変革を目指した『深淵派』の幹部だった青年カルヴァスは、いまや『深淵派』に追われる身となった。カルヴァスは故郷の港町《カサネ》にひそかに戻ってきたが、自分の記憶と過去が乖離しているようで落ち着かない。商売を営む裕福な一家の御曹司としての自分にもなじめなかった。昔の名前で自分を呼ぶ女との約束も記憶になかった。しかしかれは否応なく何者かの罠に陥れられ、街のお尋ね者になってしまう。そんなかれをなぜかかくまってくれたのは、馬車で行き会っただけのオドと名乗る男だった。かれはみずからを騒がせ屋だといい、自分は面白いことが大好きだから面白いことをするのだと笑った。




微妙に意訳が入ってしまった気がしますが、だいたいはこんなお話です。

言葉選びと文章に独特のセンスがあり、小道具や舞台の雰囲気がとてもすてきでした。

自分と世界との間に距離を感じ、生きていることに意味を見いだせなくなっているカルヴァスが、世界を思い通りにしてやろうとするオドと出会い、地下迷宮に連れていかれて出会った「女王」レムナに心をうごかされる。

キャラクターとの距離のある熱の少ない文章が、じつはかなり熱いことを語っているというギャップが、この作者さんの特徴かなと思います。

それがわたしに物語を全体としてうけとめさせ、最後まで平静に読ませるのかなあと思いました。

だからクライマックスにおこる怒濤のカタストロフがこんなにも腑に落ちるのかな。
でも、それが意外に感じられないのもこの距離感のせいかもしれないなとも思ったり。

物語がどのように構成されているかとともに、物語世界がどのように成り立っているかを同時に考えさせてくれる、とても理知的な小説ですね。

でもって、そこがだれかが恣意的に創った世界であっても、生きているものの使命は精一杯生きることなのだ、といっているような気がしたお話でした。

いつもながら、作品としてきちんとつくりあげられてあるお話でした。
なかなか核心に切り込んでこない遠回しな描き方はとても技巧的で上品。

残念だったのは、そのせいかなかなか物語世界に入り込めないという状態が、今回もけっこう長くつづいたことでした。

カルヴァスが現実からわざと意識を遠ざけていたからかもしれないけど、かれが本気になるまでは私も世界が勝手に通りすぎていくような心地でいたので、ぼやーんと読んでしまった(汗。

いままで読んだ作品も大体こんな感じだったので、これが作者さんの仕様なのかもしれませんが、すこし損をしているんじゃないかなと気になりました。


世界画廊の住人 (幻狼ファンタジアノベルス)
栗原 ちひろ 石据 カチル
4344816323

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