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『送り人の娘』

送り人の娘 (カドカワ銀のさじシリーズ)
廣嶋 玲子
4048739964


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読了。


古代日本を舞台に、死人の魂を黄泉に送る能力を持つ送り人の少女の出会う運命と神々の因縁をえがく、生と死のファンタジー。


額に第三の目を刻み、一生を死人の魂を黄泉へと送り出す送り人であることを使命としてきた真由良は、おのれの生涯の終わりが近いことに気づいた。猛日王によって滅ぼされた火具地の女王・大火美姫は女の赤子を生み落として息をひきとる。真由良は送り人の力を持つものを探していてみつけた赤子を、猛日王のもとからひきとり、みずからの後継者として育てた。伊予と名づけられた赤子はすくすくと育ち、送り人になるための修練を順調につづけてきた。だが、額に送り人のしるしである目の刺青を入れられた途端、村人からむけられるようになった忌避のまなざしにふかく傷ついていた。そんなおり、伊予は無惨に傷つけられた狼の死に際に出会い、思いもよらなかったことをしでかしてしまう。




死に真正面から向かいあい、受け入れる姿勢の印象的なファンタジーでした。
私にとってファンタジーの王道はこれだ、といいたいようなファンタジーです。


物語は、ともすると迷ってしまう死魂を黄泉へとすみやかに送り出すことを使命とする送り人の在り方と、死を忌み嫌い永遠に生きることに執着する人間の対決という構図で描かれます。

ここにあるのは、死は厭うものではない、黄泉の女神のもとにゆき抱かれる、新たな生を得るための一段階に過ぎない、という考え方です。

生と死は分断されているものではなく、それぞれが生命の一形態であるということでしょうか。

ただ、この視点は高く俯瞰的なもので、ふだん日常でそのことをつねに意識しているのは送り人だけです。
なので、一般人にとっての送り人とは死の象徴であり、親しい人との別離を意味する不吉な存在になってしまうのですね。

そしてその極端な例が、永遠の生を求める猛日王なのだと思いました。

かれの行為は残酷で自己中心的ですが、その背景にあるかれの過去も過酷なものでした。
かれの不幸は、側に送り人か、それにかわるような視点をもつ宗教者の不在だなと思う。

怒りに心を縛られた不自由なひと、というのが私の猛日王のイメージでした。

……と話の構造にばかり言及しておりますが、古代日本を舞台にしたひとりの少女の成長物語として、きちんとまとまったお話だなというのが第一の印象なので、こうなってしまいます。

序盤の自然や文化のディテール豊かな雰囲気はとても好きです。

伊予の出生や猛日王の登場シーンも迫力があって心ときめきました。

なので、次第に話を進めることが優先というか、駆け足というか、だんだん語りがせわしなくなっていくのがとても残念。

妖狼の闇真や、けなげな少年・狭霧など、個性的なキャラクターが配してあるのに、活躍度がいまいちなのももったいないです。

もっとも印象的なのは猛日王と側近の呪術師・名護のコンビで、これに匹敵するパワーを持った存在がいなかったのがものたりない原因かなーと思いました。

それと、最後にいきなりスケールが大きくなったのも違和感になったような気がします。

話としては変なところはないと思うのですが、うーむ、なにかが足りないと思ってしまう。
やはり後半急ぎすぎた気がしますねえ。
もうすこし紙幅を費やして、じっくりと描いて欲しかった。
しかしそうすると本が分厚く、お値段も高くなってしまうわけで。

悩ましいところであります。

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