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『氷上都市の秘宝』

氷上都市の秘宝 (創元SF文庫)
フィリップ・リーヴ 安野 玲
4488723039


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読了。

文明崩壊後、都市が機動要塞化して食い合う未来。時代の不穏とはよそに平穏に育った娘を主人公にした、SF冒険小説シリーズの三冊目。



氷上都市アンカレジがヴィンランドに不時着してから生まれたレン・ナッツワーシーは十五歳。変わらない毎日に飽き飽きし、顔に傷のある母親ヘスターとは何かと衝突する日々を過ごしていた。そんなおり、盗賊集団〈ロストボーイ〉の一員がレンの前にあらわれ、アンカレジに代々つたわる一冊の本を手に入れて欲しいと言う。この要望に迷ったレンだったが、母親と喧嘩したはずみにアンカレジの図書室から〈ブリキの本〉を盗みだし、〈ロストボーイ〉のガーグルに本を渡す変わりに自分を連れていって欲しいと取引を持ちかける。ちょうどその時、娘の異変に気づいたトムとヘスターがその場に駆けつけた。




『移動都市』で開幕したシリーズは、第二作『掠奪都市の黄金』から十数年後が舞台です。
主人公はトムとヘスターの娘。
彼女のやらかしたちょっとしたおいたがとんでもない事態への幕開けとなります。

レンは外界を知らずに育って平和な日常に不満を持つ十五歳の好奇心盛り。
この話から始まったと思って読むならば、彼女の無知ゆえの無謀はあまり気にしなかったかもしれませんが、これまでシリーズにつきあってきた身からするとなんておバカなとしかおもえず、冒頭は読んでいてかなりイライラさせられました。

そんななかで最も共感できたのがヘスター。
歳喰ってもこのシリーズのヒロインはヘスターだと思う。

ヘスターはレンを愛していますが、同時に憎んでもいます。
この母子って、トムを巡るライバルなんですね。
父親が魅力的だとそういう母子関係になることもあるのか。
私には想像のつかない関係ですが、ともあれ、ヘスターはアンカレジでも人びとに馴染まず、孤独なまま、心を許したのはトムだけの模様です。
そんな状況で、トムの愛情を無条件にさらってしまう娘は、やはり苛立たしい存在なのかもしれません。

そのヘスターの感情を無意識に受けとっているのか、レンもヘスターに辛辣です。
しかも周囲がヘスターとの間におく隔てを疑問もなく受け入れてしまってる。

自分の娘でも、いや自分の娘だからこそ、このしうちには許しがたいものがあるのだろうなあ。

そんなヘスターの心情などまったく知らずに、勝手に冒険して勝手に危険に陥り、トムを危険にさらしてなおトムの心を離さないレンの姿に、子供ゆえの身勝手と傲慢を感じてしまい、なかなか感情移入できませんでした。

レンが両親と離れて、冷静になってきたところでようやく普通に読めるようになってきた。

ちょうど、前作でトンズラしたニムロッド・ペニーロイヤルがリゾート都市ブライトンの市長として再登場を遂げたあたりでしょうか。


ガーグルが〈ブリキの本〉を欲しがった理由はなんなのか。
よみがえらされたストーカー・シュライクと反移動都市同盟〈グリーンストーム〉内部における陰謀。
ブライトン市長ペテン師ニムロッド・ペニーロイヤルの活躍(?)。

物語は、外界の現状を目の当たりにしたレン視点でおもに進んでいきます。

はなやかなリゾート都市ブライトンの描写は圧巻。
微に入り細を穿つ、まるで映画を見ているようなこまやかなディテールがあいかわらずすごいです。

そしてこんなに色彩豊かであざやかな世界なのに、起きていることはぜんぜん爽やかじゃなく、抑圧的だったり凄惨だったり、それも無造作にそうなところがまたすごい。

レンを追いかけるトムとヘスターがメインに来るシーンはそれが加速するようで、ヘスターの感情がマイナスに振れていくのとあいまってどんどん非情展開に。

だれか助けて、救ってと祈りながら読んでましたが、ぎゃあ、こんなところで次巻につづく!?

そんな~と悲鳴をあげたまま巻を置きました。
できるだけ早く、つづきの完結編を刊行していただきたいです。


個人的にはストーカー・シュライクにたいへん期待しております。
あと、ペニーロイヤルの奥さんは楽しくて好きでしたw

開幕編はこちら。
移動都市 (創元SF文庫)
フィリップ・リーヴ 安野 玲
4488723012

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