『中世の非人と遊女』

中世の非人と遊女 (講談社学術文庫)
網野 善彦
4061596942


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読了。


日本の中世における非人や遊女といった“身分外”とされてきた者たちを職能者と位置づけて、かれらの実態を考察しようとする。雑誌などに掲載された文章をまとめたもの。

著者の論考は、学校で習った歴史とはちがう視点でながめてみる面白さと、実際にその場にいたらこうだろうなということを感じさせてくれるリアリティーが楽しくてときおり読んでいます。

この本は著者が鬼籍に入られる直前の刊行ということで、それまでにあちらこちらに発表されたものの寄せ集めという感が強く、重複もかなりありましたが、あらたに読む部分もあり、それはそれで面白かったです。

一番興味をひいたのは、検非違使と非人たちの関係かなー。
職能をもって天皇に奉仕するかれらがいつのまにか検非違使の管轄に入っていて、遊女のあがりが検非違使に入っていたりしたという。これっていまでいうなら警察が売春の元締めになってるみたいな感じなのかしらん。

それから宮中の女房は遊女とほぼイコールであるとか。
遊女のステータスがそれほど高かったということなのでしょうね。
遊女が女房になったり、その逆になったりが、それほど珍しいことではなかったといわれると、へええっ! と思います。

学会では賛否両論ある網野説のようですが、私には現代にまでつながる歴史のながれとしてとても腑に落ちる部分が多いです。

ヨーロッパではキリスト教が女性の地位低下に大きな影響があり、日本では仏教がその役目を果たしたとか。

仏教って日本の政権を取ったりはしなかったけど、広く根深く日本人の意識に影響を及ぼしているんですね。

なるほどー。

以下は目次です。


序章
第一節 聖と俗の境で
第二節 女たちの中世

第Ⅰ部 中世の「非人」

第一章 中世身分制の一考察――中世前期の非人を中心に――
 一 研究の現状
 二 非人集団の形成
 三 鎌倉時代の非人
 四 中世後期の問題に関連して
 五 むすび
 付論一 非人に関する一史料
 付論二 非人と塩売
 付論三 清目・河原人の給田

第二章 古代・中世の悲田院をめぐって

第三章 中世の「非人」をめぐる二、三の問題
 はじめに
 一 犬神人・河原者・放免
 二 童名と童形
 三 『一遍聖絵』の非人と童形の人々
 むすび
 付論四 勧進法師と甲乙人

第四章 検非違使の所領
 付論五 横井 清著『中世民衆の生活文化』をめぐって
 付論六 三浦圭一著『中世民衆生活史の研究』について

第Ⅱ部 中世の女性と遊女

第一章 中世の女性
 一 宣教師の見た日本の女性
 二 納戸・土倉の管理者としての女性
 三 旅する女性たち

第二章 遊女と非人・河原者
 はじめに
 一 清目・犬神人・馬借
 二 女性の社会的地位
 三 遊女と女房
 むすび

第三章 中世における女性の旅

終章
 一 文明史的な転換
 二 博打について
 三 「文明化」の影

あとがき
初出誌一覧

解説 山本幸司




童名と童形という異形の姿についての論は、これまでも幾度か目にしてきましたが、これをみるたびに私の頭には殺生丸とか鬼同丸とか百鬼丸が頭に浮かびます。

あやかしの名前が童名なのは、やはりそれが人ならぬものであるから、なんだろうなー。
それは今のフィクションの世界にも受け継がれているのですねえと、勝手にしみじみとしてしまうのでした。

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