『魔法の使徒 上 最後の魔法使者 第一部』

魔法の使徒上 (最後の魔法使者第1部) (創元推理文庫)
マーセデス・ラッキー 細美 瑤子
4488577121


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読了。

西欧中世風異世界の国ヴァルデマールを舞台にした歴史ファンタジーの新シリーズ。三部作の開幕編。



地方領主の跡継ぎとして生まれ育った少年ヴァニエル。かれは頑固な父親の理想と自分の資質の違いに強烈な劣等感と失望と反発をいだいて日々を送っていた。横暴な剣術師範の悪意の言葉を鵜呑みにする父親、その態度に同調してかれをあざける弟や従兄弟たち。母親はヴァニエルの容姿ばかりをいつくしみ、性的な放蕩をそそのかす。音楽を孤独な日々の唯一の生きがいとしていたヴァニエルだったが、剣術師範にぶちのめされて竪琴を弾くための手に負傷をした。そしてただひとりの理解者・姉のリサが家を出た後、ヴァニエルの味方はだれもいなくなった。ますます意固地になるヴァニエルを父親は偏向した司祭との相談の結果、ヴァルデマールで〈魔法使者〉をつとめる伯母サヴィルのもとに送り出すことにした。厳格で冷淡だった伯母との一度きりの対面を思い出し、絶望するヴァニエルだったが――。




過去、シリーズで幾度か伝説の存在として言及されてきた魔法使者ヴァニエルの物語、開幕編です。

しかし伝説の存在も当人が生きて生身であるときにはまだ伝説ではないのでありまして。
資質に見合わない鋳型を押しつけられて困難な家庭生活を送る孤独な少年として、伝説は登場します。

ラッキーは家族の無理解と疎外に苦しむ子供というモチーフが好きなのかもしれませんね。
タリアがどこまでも健気だったのに対し、ヴァニエルは自分の容姿を利用することを知ってる鼻持ちならない少年である、という点がちと異なりますが。

孔雀のように着飾って女の子たちをタラしまくり、武一辺倒のおとこたちを侮蔑する、というかれにしてみれば当然ですが、傍から見るとしようもない防御姿勢のために、ヴァニエルはさんざんな目に逢いつづけます。

これ、ヴァニエル視点で読んでるから同情の余地があるけども、他人からしたらいやなガキだろうなあ……(苦笑。

で、父親に故郷から放逐されてヴァルデマールの厳格な伯母のもとへと連行されるヴァニエルの心情も、使者の実態やなにやらを了解済みの読み手からすると「なんだよこれ、甘やかすなよ」と思えてしまう。

予想が当たって学院ではやたらに理解者に恵まれてしまうし、父親がかれに辛く当たった原因もぜんぜん深刻に描かれないし、ラッキーの話はほんとうに楽観的であるなあと感心。

あちらこちらに不穏な兆しがちりばめられてはいますが、全体的にあかるく暢気で庶民的な雰囲気にゆるゆるしてしまう。

おかげでラストの急転直下に驚愕してしまいました。

えーっ、この展開でいきなりそう来るの!?

なんとなく私の嗜好がラッキーの書く話と合わなくなってきていて(魔法とか使者とかの神秘性というか特別性が全然感じられず道具と化しているあたりですが)、もうこの話読むの止めようかなと思っていたのですが、つづきが知りたいので予約しました。


魔法の使徒下 (最後の魔法使者第1部) (創元推理文庫)
マーセデス・ラッキー 細美 瑤子
448857713X

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