『f植物園の巣穴』

f植物園の巣穴
梨木 香歩
4022505885


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読了。

謎の木の穴に落ちた男が体験するふしぎな日常とそこから導かれる過去との交じりあう、重層的な幻想譚。

舞台は日本。
時代は、停車場という単語が出てくる、明治維新当時の女性の体験談が伝聞ながら出てくる、というところから、明治大正あたりなのかなと思われます。

ということは『家守綺譚』とかとおなじような時代でしょうか。

主人公は植物園に勤務する男。
女性の大家が営む下宿屋に独りで住んでいる。

かれが木の穴に落ちて愛用の長靴を紛失したり、放っておいた虫歯がひどいことになって仕方なく行った先の歯医者がとんでもないところだったり、植物園のかれの管理部分に狼藉が働かれたりと、ひとつひとつはたあいもない事件と、それによっていちいちひきおこされる過去の記憶が、かわるがわる、微妙に現実感を欠いた雰囲気でつづられていきます。

まるで夢のようにとらえどころのない話です。
まあ、しまいにはそういうことだったかとわかるのですが。
というか、わたしにはめずらしく真ん中あたりで行き先がわかってしまいました、という話です。

途中で暗示されたりあきらかになった出来事のせいで暗くなってしまったけど、終わりは期待以上にあかるくほのぼのとしていたのがよかったです。

あとこの話で楽しかったのは、主人公以外の登場人物が動物になっちゃうところかな。
現実にあったら絶対に行きたくないけど、かれの通う歯医者は他人事としてみるならとっても面白いと思うのです。

梨木さんの本としてはちょっともの足りませんでしたが、これはこれでいろいろと楽しめる本でした。


家守綺譚 (新潮文庫)
梨木 香歩
4101253374

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