『500年の恋人』

500年の恋人 (創元推理文庫)
スーザン・プライス 金原瑞人
4488599036


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読了。

二十一世紀から十七世紀へ、スコットランドの悪名高い一族スターカームの世継ぎに恋した現代女性がふたたびタイムトリップする、「タイムトラベル・ファンタジイ」。『500年のトンネル』の続編。

荒々しいまでに幻想の力を感じさせる物語を紡ぐスーザン・プライスの作品。ですが、うーん、、、これはファンタジーとはいえないような気がする。

固定されたタイムトンネルであるチューブの設定は『犬夜叉』の涸れ井戸みたいなものかと思いますが、この設定以外に現実ばなれしているところはひとつもないので。わたしはシミュレーションSFだと思って読みました。


前作とおなじく、十七世紀のスコットランド辺境の暮らしが生々しく描かれているところが好きです。
そこに住むスターカームやかれらと敵対するグラナム一族は、おなじ人間とは思えない価値観のなかでほんとうに生きている異文化人である、その描写にリアリティーと迫力があります。

現代と十七世紀の価値観・倫理観のギャップが、とんでもない状況をひきおこすという点では、前作も今作もかわりはありません。

しかしですねえ。

前作はそのどうしても埋められない隔たりと断絶がラストの哀切に繋がっていたのに、つづきがあると知らされた時点で「あのときの感慨はなんだったの?」という気持ちになりはしませんか。わたしはなりました。

はっきりいって、つづきがあると知ってて読んだら前作にあれほど感動しなかったんじゃないかと思ってしまいます。

この本はおもいっきり前作を前提としているので、ぜひ前作を読んでからとご紹介するのもなにか遠慮がちになってしまうというか。

しかしつづきは出てしまったのでやはり読まねばという気持ちになり、読みました。

読んで「うわあ、なんという極悪展開!」と叫びました。心の中で。

ヒロインの知らないうちに、二十一世紀陣営は決裂してしまった十七世紀とは別の次元の十七世紀と交渉を開始していたのです。
つまり、ヒロイン・アンドリアが出会うかつての恋人ピーアは別人。かれは彼女と出会ったことがない、けど彼女は愛し合った記憶があるという、残念なピーアなわけです。

この、こちらは出会ったことがあり、親しくしていた記憶があるのに、相手は初対面という状況の作り出す微妙な空気がヒロインを泥沼にさそいこんでいくあたり、ひぃ~と悲鳴をあげながら読みました。

前作ではたしかにロマンス小説でもあったのに、今回はロマンスではなく陰謀の臭いばかりがぷんぷんと漂っていて、状況が変化するごとにどんどん悪化していくんだもの。

これは血なまぐさい展開が苦手な方にはお薦めできないかもしれない(汗。

悲劇と憎悪と復讐と暴力と。

プライスの話はハードなものが多いけど、ここまでひどいのは初めて。十七世紀的な価値観で話が収まっていたならばそういうことだよねと思えるところが、二十一世紀価値観が絡んでるからよけいにひどいと感じてしまうのも原因かもしれません。

はっ。もしかしてそれが作者の意図するところなのか?
中世に漠然と憧れるひとびとにそんな甘い物じゃないといいたいの?

たしかに、中世の生活の不潔さとか不便さとかは、体にまといつくように描かれてて、わたしはそこが好きなんですけどねえ。

日常生活のことばかりじゃなく、中世の蛮族的な価値観がどれほど厳しいものであるかということも、強烈に印象づけられたのは確かです。

面白かったです。情け容赦ない展開に泣きながらも面白かった。

しかし、この話、完結してません。
おもいっきり、つづくで終わってる。

うわーん、この先一体どうなるんだよう!

訳者あとがきにも続編の情報はないと書かれているのでこのまま放置されたらどうしような不安でいっぱいです。

そこで、はっと気がつく。
うえっ。自分も似たようなことしとるやん……(大汗。

気をとりなおして。

前作はこちら。
こちらはまだファンタジーの気配があるといえばあるかもしれません。

500年のトンネル 上 創元推理文庫 F フ 7-1
スーザン プライス Susan Price
448859901X

500年のトンネル 下 創元推理文庫 F フ 7-2
スーザン プライス Susan Price
4488599028

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Re: No title

はじめまして。
お尋ねの件ですが、わたしは違うと思っています。

たいしたものではありませんが昔の感想はこちらにあります。
http://moonsong.s31.xrea.com/reading/diary/200309.html#sterkarm_1

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