『天界の城』

天界の城 (ハヤカワ文庫 JA (664))
佐藤 史生
4150306648



読了。


独自の世界を理知的な視線で熱くえがく、SFマンガ短篇集。

先日他界された佐藤史生さんの作品集です。
訃報を聞いてから衝動的に手に入れたのですが、その後なんとなく畏れ多くなり、読むまでに時間が空いてしまいました。

だけど読んでよかった。心底よかった、と思いました。

収録作品は以下の通りです。


阿呆船
馬祀祭
天界の城
羅陵王
やどり木

解説/尾之上俊彦




このなかで既読は阿呆船、馬祀祭、天界の城だと思うのですが……以前読んだ時に感じた距離感が見事になくなっていて、わたしはようやくこの方の作品をきちんと受けとめられるところまで来たのだなあと、感慨に耽りました。

初読の時にはストーリーをなぞるばかりで描かれていることの意味がほとんどわかっていなかった。
だからハードカバーでもってたのに手放したりしてしまったんだな。
ああ、なんということでしょう。もったいない~(じたばた)。

とても些細で個人的な出来事を描いているようで、じつはその世界の広がりや有り様までふくめて提示してしまう、理知的で繊細で大胆な筆さばき。

民俗学的・神話的な象徴を含んだ普遍的で大きく残酷な物語。

でありながら、その物語をみずからのものとして血を流しながら生きていく、人間たちの姿のいとおしさ。

いま読んでみると、そこかしこに「ああ、これは佐藤史生のパターンだな」と思える部分が見えてきたりして、いまさらのように溜息をついてしまう。

どの作品も、緻密に構築された気品のある物語で、なによりもSFでした。
解説の方が“SF作家佐藤史生”と書かれていますが、ほんとうにこの方はマンガ家である以前にSF作家だったんだと思いました。

そういえば、わたしはまだ佐藤史生のすべての作品を読んではいなかった。
なんで並んでいたコミックスを真面目に手に入れて来なかったかと、いまは悔やむばかりなのでした。


慎んでご冥福をお祈りいたします。

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