『魔使いの過ち 下』

魔使いの過ち 下 (創元ブックランド) (sogen bookland)
ジョゼフ・ディレイニー 金原 瑞人
4488019749


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読了。

イングランドぽい世界を舞台に七番目の息子の七番目の息子・トムが、魔使いの弟子として出会う苦難をとおして成長して……いってると思うファンタジー。「魔使いシリーズ」第五弾の下巻。


トムの母親がギリシアが故郷なのでたぶん異世界ものではないと思っていたシリーズですが、どうやらやっぱりイングランドが舞台のようです。今回、湖水地方が出てきました。年代は、うーん、近世あたり、かなあ。軍の徴兵部隊が無法を働いたりしているから。

というわけで、上巻ではグレゴリーから紹介された新たな師アークライトの元で修行を始めたトム君が、水の魔女モーウィーナというおそろしい敵と接近遭遇し、とんでもない危機に見舞われたところでした。

モーウィーナは魔王の娘で、自分でトムを殺せない魔王が放った刺客だったのです。
さらに、魔王を呼び出した魔女たちはけっきょく仲間割れして内部抗争を展開しているらしいとか。
アリスがトムを救うために闇の魔術をつかってしまうとか、じつは彼女の行動にはとある人物の助言があったとか、それはもういろいろな事実があきらかになって、うわあ、でございました。

魔使いのグレゴリーじいさんはかたくなに闇と光を区別して、闇の存在を否定し拒絶しています。

すこしでも闇に手を染めたら魔王にひきこまれて人の世界には戻ってこられない。そのことを厳しくトムに言い聞かせ、道を誤るなと警告しつづけます。

トムもそのことを身をもって体験しており、ほとんど師匠の言葉を信じています。

けれど、すくなからぬ好意を抱いている少女アリスの存在を否定しきることもできずにいます。だからアリスには魔女の技を使って欲しくない。けれどもアリスはトムのためにどんどん魔女に近づいていくのです。

これって、ものすごいジレンマですな。幼い……とはいえないかもしれないけど、それにしてもまだまだ子供のふたりなのに、このあたりの葛藤は無邪気な子供のものではありません。愛するものをそのまま認めたいのに認めると自分の価値観が崩壊してしまう。トムはそんなことに決着をつけたくないのに、師匠はすぐにしろという。

その師匠にしてからが、かつて魔女との間に愛を育んだ過去があるのです。その体験に裏打ちされた言葉を軽んじることもできません。

師匠はトムの優柔不断を見ておれなくて、どんどん手出しをしてしまいます。

でも、たぶんこの話は光と闇を善と悪で区別してはいないんじゃないかな。

魔使いには男しかいないようなので、そのことが明確に語られることはまだないけれど、魔使いの論理は男性の論理という気がします。

気になるのは占者が見たトムとアリスの未来ですねー。
ほんとうにあれは実現を約束されたことなのかどうか。

このシリーズは一見、光が正義であるという主張をして、そこかしこに闇と関わる魔女を悪として書いているようなのに、それとなく善と関わる魔女の存在を描いているところがいいなと思います。

重要なのはトムの母上の存在かなという気がする。


ところで、いままでは普通に児童文学として読んでいたところで、今回非常に強烈なわたしにとっての萌えキャラが登場しました。

それは魔女のグリマルキン。
かつてトムを殺しに来たことのある魔女マルキン一族の殺し屋です

彼女の冷徹で現実的でさらにめっぽう強いところに、わたしはすっかり魅了されてしまいました。
わーん、カッコイイです、グリマルキン!

悩めるトムと運命を手放してしまった魔使いの行く末も気になりますが、アリスとグリマルキンのその後が知りたくてうずうずします。
わたしはアリスはグリマルキンと合流すると決めてかかっておりますよ。そうじゃなかったら泣いてやる←オイ(汗。


この話の上巻はこちら。
魔使いの過ち 上 (創元ブックランド) (sogen bookland)
ジョゼフ・ディレイニー 金原 瑞人
4488019730


シリーズ開幕編はこちら。
魔使いの弟子 (sogen bookland)
ジョゼフ ディレイニー 佐竹 美保
4488019528

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