『聖人と悪魔 呪われた修道院』

聖人と悪魔―呪われた修道院
メアリ ホフマン Mary Hoffman
409290374X


[Amazon]

読了。

十四世紀イタリアはアッシジの修道院を舞台に、少年少女の成長を謎の連続殺人を軸に描く、歴史ミステリ。


馬と鷹を愛する男爵の跡取り息子シルヴァーノは、恋をしていた。相手は富裕な羊農場主の若き妻アンジェリカ。シルヴァーノが想いを託した詩は、友人のジェルヴァシオによって窓辺のアンジェリカへと捧げられた。ところが、ある日アンジェリカの夫トンマーゾがナイフで刺されて殺された。犯人逃走直後の現場に居合わせたシルヴァーノは、凶器が自分のナイフであったため犯人として手配されてしまう。いっぽう、父親を失った少女キアーラは、兄によって女子修道院に押し込められようとしていた。かつては裕福だったキアーラの家はいまはおちぶれ、置いておくには費用がかかりすぎ、結婚させようにも持参金が用意できないというのだった。怒りと孤独を抱えてジャルディネットの清貧のキアーラ女子修道院で見習い修道女として暮らすことになったキアーラは、となりの聖フランチェスコ修道院に見習い修道士らしからぬ少年の姿を目撃する。少年はシルヴァーノ。羊農場主殺しとして追われる身を、かくまってもらうためにやってきたのだった。




面白かった~!!

ルネッサンス期のイタリア諸都市を舞台にしたファンタジーシリーズ「ストラヴァガンザ」の作者さんの、ファンタジー要素のないミステリです。

この本を読んで、あのファンタジー要素はやっぱりなくてもよかったんだ、というかほんとうはファンタジー要素はただの導入要素だったんじゃ……と感じました。
十四世紀のイタリアのみを舞台にしても、まったく遜色ないドラマが描かれてますから。

そして、舞台を限定したおかげでよりじっくりと、この時代の事物に触れることができる展開になってます。

今回の舞台は修道院と女子修道院、そして大聖堂。
登場人物は貴族の若者と商家の娘、たくさんの修道士に修道女。そしてとくべつな存在感を放つ画家。

修道院の日常生活やそこにくらすひとびとのこまやかなディテールが楽しくて、ピーターズの「修道士カドフェル」を彷彿とさせました。

その明暗や陰影であらわされるような穏やかな生活が、ときならぬ暴力によってさんざんに打ち壊されていく展開に、そうかこれって連続殺人ミステリなんだと遅まきながら気づいたわたし←どんくさ!

聖フランチェスコ修道院長ファーザー・ボンシニョーレの憔悴に、胸がふさがれるような想いがしましたよ。

若者たちの活力にあふれるあまりに自分勝手な行動もハラハラどきどきの原因でしたが、かつての恋人と再会した中年男女のドラマに目が離せませんでした。この作者さんの話って、ちゃんと大人にも人生があることをきちんと書いてくれるのがいいなーと思います。

そんな劇的な展開の中で、大聖堂で壁画を描いている画家シモーネ・マルティーニさん(実在の人物)関連のさまざまにはその素晴らしいお仕事を含め、顔料の話やモデルの話やらで楽しませていただきました。

それと、シルヴァーノのお鷹さまやお馬さまが何気なく活躍してくれたのも嬉しかったです。

ミステリとしてはどうなのはわたしにはわかりませんが、ドラマティックな物語、あとあじのよいお話として、とても面白かったです。

タイトルに躊躇してこれまで手にとらなかったことを後悔しました。
このタイトル、ぜんぜんキャッチーじゃないですよね。
なにかもっと眼を惹くようなものにすればよかったのにと思います。
といって、代案も思い浮かばないのですが。

原題は"The Falconer's knot"。
「鷹の結び目」?

うーん。これは謎解きの核心部分を表してるんだろうけど、日本語だと意味不明だなあ。


「ストラヴァガンザ」シリーズの開幕編はこちら。

ストラヴァガンザ―仮面の都
メアリ ホフマン Mary Hoffman
4092903715

Comment

Comment Form

管理者にだけ表示を許可する

Trackback


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)