『シュトヘル』1~3

シュトヘル1 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)
伊藤 悠
409182529X


借りて読了。

十三世紀、モンゴルが大征服を開始したアジアを舞台に、悪霊と恐れられる女戦士と敵対する国・タングートの文字に魅せられたモンゴルの王子の、波乱の運命を描く、歴史サバイバルコミックシリーズ。



現代の高校生・須藤は、毎晩悪夢にうなされていた。夢の中は戦乱の時代で、かれは敗走する国の兵士として火の粉の降るなか味方の死に目を看取っていた。そんなある日、須藤は転校生だという女子生徒・鈴木と出会う。深刻な顔をした鈴木は須藤の家に訪れ、かれのつくった弦のない楽器を涙を流して奏で始めた。すると、須藤は突然夢の世界へと移動する。絞首刑にされた須藤がなんとか死から逃れてはじめて出会ったのは、鈴木とそっくりの少年・ユルールだった。ユルールは須藤をシュトヘル(悪霊)と呼び、また会えてよかったとよろこぶ。そしてこれまでの出来事を語りはじめるのだった。




すごかったです。
なんといっても画力が凄い。
十三世紀アジア大陸の戦乱の世界を、迫力ある戦闘シーンとともに臨場感をもって描ききるちからは並大抵ではありません。

殺伐としたシーンがつづきますが、スピード感あふれる展開にだれることなく、熱い思いに突き動かされるようにページを繰りました。

国や集団、個人の思惑が絡み合う陰謀めいたかけひきなどもえがきながら、今、この場の利益のためならすべてを正当化できるとするものたちと、未来へ営みをつないでゆこうとするものたちのせめぎ合いが、文字というひとつの象徴を巡るものがたりが展開されるのかなあと、想像しました。

それに、登場人物の容姿もそれぞれに生気にあふれて魅力的で、とても力強い。
ほれぼれと見ほれてしまう、骨太感と肉感があります。

とくにタイトルロールのシュトヘル=悪霊。
おんならしくどっしりとした下半身の強靱さに惚れてしまいましたw
これで彼女、いくつなんでしょうか。
というか、なぜ彼女は女ひとりで従軍していたんでしょうか。
苛酷な敗戦の後、超常体験をして超戦士となった彼女の存在感は、生きながらにしてすでに伝説的なものがあるなあと思います。

彼女の常軌を逸した在り方に執着する、十字軍に人生を破壊された商人アルファルド。
彼女に仇としてつけ狙われる、ツォグ族の跡取りでユルールの兄ハラバル。
ユルールの義母の侍従でユルールを西夏文字の庇護者にえらび導く、ボルドゥ。

復讐に心を縛られていたシュトヘルに別の生き方を見せる少年、ユルール。

だれもが血肉をそなえ体温のある人間として生きている姿が、たまらなく熱かったです。

と、十三世紀のストーリーはとても魅力的なのですが、この話の大枠には大きな謎がありまして、そこのところが判然としないため、どっかりと腰を据えられない、居心地の悪さがぬぐえないのがなんとも言えないところ。

おそらくわたしは作者さんの思惑通りに悩んでいるのだと思うのですが、すごく、気になる。
気になるぞー。
と気になって仕方ないのですがネタバレになりそうなのでここには書けません(苦。

借りた分を一気に読んでしまいましたが、既刊も三巻までなのですね。
こういう話は完結してから一気読みしたいものです。

この気持ちが、続きを読む時まで持続していますように……


シュトヘル 2 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)
伊藤 悠
4091827993


シュトヘル 3 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)
伊藤 悠
4091834205

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