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ごく個人的な2010年ベスト

2010年に読んだ中から個人的に面白かった&好きな本です。2010年に読んだというだけで、刊行されたのは違う年のものも多いです。というかほとんど違います。順番はたぶん読んだ順で他に意味はありません。

ちなみに2010年に読んだ本は再読を含めて161冊でした。


・ブランドン・サンダースン『ミストボーン 霧の落とし子』全三巻。ハヤカワ文庫FT。

若き盗賊の頭に見いだされた奴隷の少女が、ぬきんでた合金使いとして帝国の打倒に関わっていくという、異世界冒険活劇ファンタジーのシリーズ開幕編。
アクションあり、陰謀あり、恋愛ありの盛りだくさんの内容を個性的なキャラクターたちの活躍によってスピーディーに描いていく、日本のラノベに近い雰囲気のある作品です。
他の作品なら魔法使いに当たる合金使いという存在の設定がとてもユニークで面白いです。システムとかいろいろ考えられていて、このままゲームになりそうな感じ。
そのゲームならば画面で見ることしかできない合金使いの感覚を、文章によって追体験できるのが魅力です。もちろん、それには文字による表現を感覚として消化する想像力が不可欠なわけですが。

物語の展開としても読み手の意表を衝く展開の連続。それがとてもスピーディーに進んでいくので飽きる暇がありません。
たいそう面白く、楽しく、どきどきしながら読みました。

被支配民のスカーと貴族の関係や心理的な距離、終の帝国の不死の皇帝の謎など、異世界ものとして必要充分以上に緻密に織りあげられた物語世界の質感をも楽しめて、これはとてもお得なシリーズだなと思いました。

ただ、合金術のシステムがあまりにも合理的に出来ているせいか、ファンタジー的な雰囲気にはちょっと欠けてる感があるような。

といっても、ファンタジーだろうとなかろうと、この作品がとても面白いことは確か。

今は第二部の『ミストスピリット』を読んでる途中です。
世間的には第三部にして完結編の『ミストクローク』が刊行中です。←つまり、わたしは相当に遅れています(汗。

ミストボーン―霧の落とし子〈1〉灰色の帝国 (ハヤカワ文庫FT) ミストボーン―霧の落とし子〈2〉赤き血の太陽 (ハヤカワ文庫FT) ミストボーン―霧の落とし子〈3〉白き海の踊り手 (ハヤカワ文庫FT)


・リリ・タール『ミムス 宮廷道化師』小峰書店。

中世から近世にかけてのおそらくドイツ近辺にある小国を舞台にした、敗戦によって道化師の身分に落とされた王子の苛酷な境遇とそれによって成長していく姿を描く、架空時代小説。児童向け。

幻想も魔法も存在しないお話ですが、ファンタジーといってもいいかもしれないと思ってしまうのは、この物語における道化師の存在が特別だからかなーと思います。

道化師は身分外の存在です。
王の側に侍り、王を楽しませるためにいるけれど、王を批判しても罰されることのない存在。
もちろん、その道化師がどれほど道化師としてすぐれているか、王に必要とされているかによって、道化師の持つ力は増減するのですが、平民よりも下なのに、ときに王よりもつよい発言権を持つ、特異な存在であることの意味が、主人公の少年の目をひらかせ、ひいてはおのれの境遇を変化させていくことに繋がっていく。

身分外といえばすぐに吟遊詩人が思い浮かびますが、この話では一見尊敬されることのなさそうな道化師であることが必要だったのだなーー。

初めはまったくの架空ものかと思われたのですが、あとのほうで十字軍らしきものの影が出てきたりして、そうではないことがなんとなくわかるようになっています。

史実と繋がっていてもいなくても話そのものには関係ないような気もするのですが、そうと知ればこの物語に描かれてるあれやこれやの細々したことはリアルなんだなという気持ちにはなれるかな。

ミムス―宮廷道化師 (Y.A.Books)


・ロビン・ホブ『黄金の狩人』全三巻。創元推理文庫。

重厚で物語的にも精神的にも趣深い異世界ファンタジー三部作「ファーシーアの一族」のつづきです。
ので、さきに「ファーシーア」を読んでからお読みください。

面白おかしい話ではなく、むしろ重苦しく辛い話なので、そういうのでもいいよーという方にお薦めします。
少年の成長とひとつの時代の終焉を描いた前作から云年(すみませんもう忘れてます)、中年になった主人公のあらたな物語が始まります。

広大な世界と複雑怪奇な人間模様。
得体の知れない力と力のせめぎ合い。
人間ドラマでありつつも、異界や魔法の匂いが非常に濃厚な物語です。
この世界に存在するすべての生き物たちがここに関わっていると感じられる、そんな奥行きとひろがりのある世界の描かれ方が素敵で大好きなのです。

なによりも今回はこれにつきます。
狼ラヴ!

黄金の狩人1 (道化の使命) (創元推理文庫) 黄金の狩人2 (道化の使命) (創元推理文庫) 黄金の狩人3 (道化の使命) (創元推理文庫)


・ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄 1万3000年にわたる人類史の謎』上下巻。草思社。

小説ではありませんが、読んで大きな衝撃というかなるほど! と膝を打った人類史への考察。
文明の進化のスピードの違いは人種ではなく環境にあると解いた点で、非常に客観的に納得の出来る考察でした。
新聞読書欄の「ゼロ年代の一冊」的な企画で多くの方から支持されたという記事を見て読んでみたのですが、その評価も納得。
そして、この考え方はすでにスタンダードになっているような気配も感じました。

それぞれに異なる環境によって育まれたそれぞれに異なる歴史をもつ人びとの歴史が、土地や機構という環境を通してみると理路整然とおなじように理解できていくのが快感。

おなじ方程式をつぎつぎにいろいろな土地に当てはめていくので、下巻にいくと先が読めるようになってしまうのですが、それはもう読み手がこの考え方を受け入れたという証拠なのではないでしょうか。

それに、大きな流れはおなじでもそれぞれに異なる環境がどのように文明に作用していったかの過程は違うわけですし、これまであまり知ることのなかった地域の歴史も学べて、個人的にはとても有意義な時間を過ごせたと思います。

ひさしぶりに知的な興奮をかんじる本でした。

銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎 銃・病原菌・鉄〈下巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎


・賀東招二『ずっとスタンド・バイ・ミー フルメタルパニック!』上下巻。富士見ファンタジア文庫。

長くつづいていた+待っていた、SFミリタリーアクションコメディーシリーズの、遂に完結編。
読み始める前に既刊を再読しておさらいしておいてよかった。
おかげで細部まで満喫することが出来ました。
すべての伏線を回収して大きなストーリーの流れを収束させつつ、それぞれのキャラクターに見せ場をつくり、ニヤリとさせるシーンが続出。

最後の戦いへと突入してからはどんどん盛りあがって、ゆきついたクライマックス。
非日常の極地から垣間見せられた日常のいとおしさに、涙が出そうでした。

すべてがきれいにおさまって最後は「大丈夫だ。問題ない」。

前向きで爽やかな見事な若者向け娯楽作品でした。
拍手!

フルメタル・パニック!11  ずっと、スタンド・バイ・ミー(上) (富士見ファンタジア文庫) フルメタル・パニック!12  ずっと、スタンド・バイ・ミー(下) (富士見ファンタジア文庫)


・伊藤計劃『虐殺器官』ハヤカワ文庫JA。

SFミリタリーアクションミステリ。

こちらはおなじミリタリー物でも「フルメタ」とは似て非なる作品でした。
アメリカ軍内部の隠密部隊に所属する主人公の、やわらかな心が傷だらけになって蝕まれていく過程が、情報戦と格闘戦のクールな描写とともに叙情的に描かれていくさまが圧巻。
現代的な問題提起と、現実社会に生きるつらさのリアリティーが、たんなる娯楽作品の枠には収まりきらない読後感に繋がってるような気がしました。

読んでる途中はひりひりとしましたが、読み終えたあとは茫然。
しばらく頭から物語世界が離れませんでした。

作者さんは夭逝されましたが、こういうかたにこそもっともっといろんな話を書いて欲しかったなと思います。

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)


・清家未森「身代わり伯爵シリーズ」角川ビーンズ文庫。

とっても可愛くて楽しい異世界宮廷コメディーシリーズ。

じつは隣国の公爵の隠し子だったパン屋の娘が、父親の元で貴族として育った双子の弟の身代わりとして伯爵を演ずることに。その過程で弟の副官に恋をして、その副官にも恋されて、なのになかなか思いを伝えあえないままにいろんな騒動に巻き込まれる、めちゃくちゃ笑えるお話です。

まず、ヒロイン・ミレーユのまっすぐで猪突猛進する性格がとんでもない状況を作り出していくさまと、彼女を取りまく変人たちの奇天烈な言動がおかしいです。

さらに生い立ちのせいで無意識に恋をしたくないと思っているミレーユの、恋愛関係の言動を斜め上に解釈して誤解する能力に、ミレーユに想いを寄せる人びとが翻弄されて散っていく姿が非常におかしいです。

そんなミレーユの恋のお相手は、兄の副官リヒャルト。

穏やかで礼儀正しく余裕ある態度の貴公子然とした好青年なのに、無意識に相手を口説くような危険な天然言動とか、おそろしいまでの味音痴とか、寝起き最悪で手近な人物を抱き枕にする癖ありとかの実態があきらかになっていくたびにヘタレ度がアップw

シリーズの焦点は、ミレーユがいつ自分の思いを自覚するか、さらにリヒャルトがいつヘタレを返上するか。

そんな甘甘のロマンス要素が、王位継承権争いに端を発した陰謀劇とともに怒濤の勢いで進行するのですが、その要所要所でふたりの間の“これぞ王道”なシーンがいちいち決まってるのが憎い!

話がクライマックスに向かうにつれて、その王道度がどんどんアップしていくのが快感でしたv

もう、おかしくて楽しくて、にやにやしっぱなしw

なんにも考えずにひたすら笑ってよめる、じつに愛らしいシリーズだったなあと……あ、まだ終わってないんですが、とにかく満喫しました。

ヘタレ男がブチ切れたら面白いよー、ということがすごくよくわかったので、何かの参考にしたいなあとか思ってしまいましたw

身代わり伯爵の冒険 (角川ビーンズ文庫) 身代わり伯爵の結婚 (角川ビーンズ文庫) 身代わり伯爵の挑戦 (角川ビーンズ文庫) 身代わり伯爵の決闘 (角川ビーンズ文庫) 身代わり伯爵の脱走 (角川ビーンズ文庫) 身代わり伯爵の潜入 (角川ビーンズ文庫) 身代わり伯爵の求婚 (角川ビーンズ文庫) 身代わり伯爵と伝説の勇者 (角川ビーンズ文庫) 身代わり伯爵の失恋 (角川ビーンズ文庫) 身代わり伯爵の告白 (角川ビーンズ文庫) 身代わり伯爵の誓約 (角川ビーンズ文庫)


・須賀しのぶ『神の棘』全二巻。早川書房。

これまで少女向けライトノベル方面で活躍されてきた作家さんが早川書房から本を出すと聞いて、まずSF? と思ったのですが、なんと実際は第二次世界大戦前後のドイツを中心としたヨーロッパを舞台にした、重厚な歴史ミステリでした。

主人公はナチスの幼なじみのふたり、若きエリート将校とカトリックの修道僧。

ふたりの生きていく道はときに重なり、ときに離れてそれぞれにつづいていきますが、時代の嵐のなかで生きていく姿と、その道のりの苛酷さに息を呑む展開でした。

読んでいくうちに、ドイツ人がヒットラーのナチに政権を委ねたのはなぜなのかが理解されてくると、どんどん怖くなってきました。

それはその時代のドイツの置かれたような国際情勢、国内状況に疲弊しきった人間ならだれでもが犯してしまうようなあやまちだったのだということが、とてもよくわかったので。

そして、それが今の日本にとてもよく似ているようだったので。

ナチスの戦争犯罪は残虐の一言に尽きますが、なかでもユダヤ人差別のひどさは吐きそうになるくらい酷かったです。こんなことをされたら、それはトラウマになるだろうなと思います。でも、だからといって自分たちがおんなじことをしていいということにはならないとも思う。

何の罪もない被害者と比べたらいけない気もしますが、現場の兵士たちがどんどん疲弊していく姿も辛かった。こんな行為をつづければ精神的に病んでいくのが当然。戦場にでない党の幹部たちが憎くてたまりませんでした。

ナチスを止めようにも止められない、カトリック教会の人びとの苦悶と、その弱腰に幾度も失望しつつ期待してしまう信者たちの苦闘は初めて知りました。
なすすべのない絶望の中で最後には信仰にすがって死んでいく者の姿と、勝利のためには信仰をもないがしろにする人間の姿の対称には、言葉を失った。

あまりの悲惨さに、これがミステリであることをほとんど忘れました。
圧倒されました。

でも、ちゃんとミステリだったのですよね。
ちょっと事実の迫力に物語としての枠がかすんだような気がしましたが、さいごをまとめるにはこの枠は必要だったんだなーと思います。
けど、わたしにとってはこの話は小説じゃなかったなー。
この話のことを考えるといまも戦場の光景が眼に浮かんできます。
実際には見たこともないのに。

神の棘 1 (ハヤカワ・ミステリワールド) 神の棘 2 (ハヤカワ・ミステリワールド)


2010年はそんなにたくさんは読んでないと思ってたけど、語り出すとけっこう濃かった。
シリーズ物を再読含めて一気読み、というパターンがふたつありましたね。
一気読みは伏線忘れやディテール忘却がなくてよいのですが、体力的には結構キツイです。
ラノベならできるかも。←じっさいそれしかやってなかった。
フルメタは家族が手術を受けてる待ち時間に読んでいました。
おかげで思い出すと待合室の光景が浮かんできます。

今年は他人様のおかげで積ん読がけっこうできているので、うれしたのしくそれらをまず消化していきたいと思います。

以下はその他の印象に残った本です。

恒川光太郎『南の子供が夜いくところ』、賀東招二『コップクラフト』、メアリ・ホフマン『聖人と悪魔 呪われた修道院』、杉井光『さよならピアノソナタ』シリーズ、森谷明子『深山に棲む声』『葛野盛衰記』、荻原規子『RDG3 夏休みの過ごしかた』。




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