『ピアノの森 19』

ピアノの森(19) (モーニングKC)
一色 まこと
4063729540



借りて読了。

恵まれない環境に生まれ育ったピアノの天才少年と、かれをめぐる人びとの音楽人生をえがく、クラシック音楽コミック。シリーズ第十九巻。

森の端とよばれる社会の最底辺に生まれたカイ。
カイと出会い、挫折していた人生を回復した阿字野先生と、ライバルとして生きることになった雨宮君。
カイの音楽に揺り動かされるおおくの人びとの物語です。

ストーリーは現在ポーランドでのショパンコンクールの二次審査真っ最中。
ポーランド人であるショパンを記念して創設されたピアノコンクールでは、ポーランド人の受賞をのぞむ濃厚な意志がながれています。
そこにあらわれたポーランド人のレフ・シマノフスキの素晴らしい演奏に、会場は優勝者がすでに決まったかのような大興奮状態。
休憩をはさんではじまるカイの演奏は、はたしてどこまでこの雰囲気を変えることが出来るのか?

どきどきの展開と、マンガという手段によって流れるように波うつように描かれる音楽の響きが、劇的な作用を生みだしていくさまは、まさに圧巻。

知らない音楽なのに、いまここでその響きを身体に受けているような錯覚すらおぼえる臨場感に、うわーと思いながら読みました。

これで実際ショパンのマズルカだのなんだのを知っていたら、もっとすごい興奮が味わえるのかも。
カイの表現力の凄さを目の前で感じている人びとが羨ましくてなりませんでした。

同時進行で阿字野先生の回想が、カイとふたりでの音楽の旅をふり返ってくれて、それが阿字野先生にどれだけ生きる力を与えてくれたか、阿字野先生がカイにどれだけ豊かなこころを与えてくれたかを教えてくれた。

阿字野先生がカイをこのコンクールに出場させた真情があかされたときには、ああ、ほんとうに先生はカイのことを愛しているんだなとおもって、うるうるしてしまいました。

カイは幼い時は苦労して、いまも苦労は変わらないかもしれないけれど、本当にまわりに愛されて支えられてきたんだな。

ここまできたら、カイの出来る恩返しはカイらしい演奏をすることだなーと思えて、もう、コンクールの他の出場者なんてカイには関係ないんじゃないかとおもったりしました。

阿字野先生の意志を、カイは十分に体現しています。

それに比べて……。
雨宮親子は哀しいというか寂しい。

特に雨宮父は、そんなに阿字野先生のピアノが忘れられないのか。そんなにいまでも負けた気持ちを引きずっているのか。すでに名を遂げたピアニストなのに、そんなに自分に自信がないのかと。
自分のコンプレックスを息子に押しつけるだけでなく、他人に圧力をかける姿にはうーーん。困ったものだなあと。
これじゃあ雨宮君のことを思ってくれてる先生に申し訳ないし、雨宮君のためにもよくない。
雨宮君は父親とは完全に離れた方がいいような気がしました。

コンクールはこれからがクライマックスですが、わたしの興味はカイと阿字野先生のその後にむかっています。
そういえば、カイの手はその後どうなったんでしょうか。気になるわ。

つづきを楽しみに待ってます。


シリーズ開幕編はこちら。
ピアノの森 1 (モーニングKC (1429))
一色 まこと
4063724298

Comment

Comment Form

管理者にだけ表示を許可する

Trackback


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)